京都市立芸術大学 副学長 大嶋義実×京都コンサートホール プロデューサー 高野裕子 対談<前編>(Kyoto Music Caravan 2023)

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インタビュー

京都市立芸術大学の新キャンパス移転と文化庁の京都移転を記念した一大クラシック音楽イベント「Kyoto Music Caravan 2023」。京都コンサートホールと京都市立芸術大学(以下「京都芸大」)、京都市、そして京都市交通局の4者共同主催のもと、開催しています。

4月29日の仁和寺でのコンサートを皮切りに、京都市11行政区それぞれの名所や観光地で無料コンサートを開催しており、多くのお客様にご来場いただいています。

10月1日に新キャンパスオープンを控える京都市立芸術大学。春・夏とさまざまな場所でコンサートを開催した「Kyoto Music Caravan 2023」も、いよいよ秋のシーズンに突入します。大学・イベント共にターニングポイントを迎える今、京都市立芸術大学副学長の大嶋義実教授と、Kyoto Music Caravan 2023のディレクターであり同大学出身者でもある京都コンサートホールプロデューサーの高野裕子による対談を実施しました。
前半・後半の2回にわたり、お届けします。

(聞き手:京都コンサートホール 中田 寿)

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指揮者 沼尻竜典 インタビュー<前編>(2023.11.18 京都コンサートホール×京都市交響楽団プロジェクト Vol.4『ニーベルングの指環』より(ハイライト・沼尻編))

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京都コンサートホール

1118日に、京都コンサートホール×京都市交響楽団プロジェクトVol.4として、ワーグナー生誕210×没後140年『ニーベルングの指環』(ハイライト·沼尻編)を開催します。公演に先立ち、今年の3月にびわ湖ホール第2代芸術監督を退任された指揮者の沼尻竜典氏と、長年オペラ制作に携わってこられたびわ湖ホール総括プロデューサーの村島美也子氏にお話を伺いました。前編では、びわ湖ホールでのオペラについて、後編では今回のコンサートについてお話いただいております。ぜひ最後までご覧ください!


――このたびは、インタビューの機会をいただき、ありがとうございます。びわ湖ホールでのオペラ制作の秘話や、今回のコンサートについてお話をお伺いできればと思います。
沼尻さんは、これまでびわ湖ホールで長年オペラに携わってこられましたね。

沼尻竜典氏(以下敬称略):びわ湖ホールでは、開館前から色々な事業に携わってきました。開館してからは、青少年向けのオペラを日本語で上演する機会を毎年2回ずついただくようになりました。「原語でやるべきだ」という意見もありましたが、入門者には母国語でリアルタイムに内容が理解できることが大切なんです。オペラは長い練習期間が必要なので大津滞在が多くなり、地元との関わりを深めていきました。

――びわ湖ホールの第2代芸術監督に就任された際、初めからワーグナー作品に取り組もうと思ってらっしゃったのですか?

沼尻:いえ、それは全く考えていませんでした。初代芸術監督の若杉弘さんはヴェルディの日本初演作品など比較的珍しいプログラムを上演してこられたので、びわ湖ホールに来場されるお客さまはオペラをたくさん聴き込んだ方が多かったのです。そこで、オペラ通の方だけでなく、もっと幅広い層のお客さまに来ていただきたいと思い、メジャーな演目も選ぶようになりました。

村島美也子氏(以下敬称略):あまりメジャーな作品はなかったですけれどね(笑)。2007年に始まった「沼尻竜典オペラセクション」の初回は、いきなりツェムリンスキーの歌劇《こびと》から始まりましたから。

沼尻:年に2本大規模なオペラを上演し、1本はポピュラー路線、もう1本はマニアック路線というラインを作りました。ポピュラー路線では、プッチーニ《ラ·ボエーム》·《トゥーランドット》やヴェルディ《椿姫》、マニアック路線では《こびと》やベルク《ルル》、R.シュトラウス《サロメ》を上演しました。

沼尻竜典マエストロと村島美也子プロデューサー

――その後、ワーグナー作品に取り組まれますが、何かきっかけがあったのでしょうか?

沼尻:まずは、マニアック路線の方で2010年に《トリスタンとイゾルデ》をやってみようという話になりました。上演してみると、お客さまの反応がとても良かったのです。案外多くの方がワーグナーを好きなのだと思いましたね。それで2012年にポピュラー路線のほうで《タンホイザー》をやることにしました。これがまた好評で、2016年には《さまよえるオランダ人》、2017年からは4年間かけて『ニーベルングの指環』(通称:リング)に取り組むことになりました。

――プロダクション選びは、沼尻さんとびわ湖ホールのスタッフの方が一緒にされるのですか?

沼尻:そうですね。私の提案に対して「(経費が)高い!」と村島さんによく言われました(笑)。『リング』の前までは、海外を旅して色んなオペラを観て、良さそうなプロダクションを見つけたら公演後にそのまま舞台裏に行き、舞台セットを買い付けるようなことも自分でしていました。

――マエストロが直々に舞台セットの買い付けもされるのですね。

沼尻:まずはコンテナ何個分に収まるかという話です。2個程度までなら輸入するのにそこまでお金はかかりませんが、「すごく良いな」と感激したあるプロダクションの舞台が「コンテナ6個分です」と言われ、さすがに見送ったこともあります。
当初は神奈川県民ホールと共同制作をしていましたが、両館の舞台機構の違いから演出上の制約も多かった。協議を重ねて『リング』以降はびわ湖ホール単独で制作することになりました。舞台セットをはじめ、何から何まですべてびわ湖ホールが製作したのです。

村島:『リング』は4年間続くことが分かっていたので、一度作った舞台装置は壊さずに劇場に置いていました。バックステージに大きい岩などがずっと置いてありましたね(笑)。

沼尻:『リング』はせっかく作ったのだから、4作品まとめて再演したかったのですけどね。お客さまや評論家からも「リングは4作品を短期間に続けて上演してこそ意味がある」とよく言われました。しかし実際は稽古も長くなるので、オーケストラと歌い手のスケジュールを確保するのが難しいですね

――ちなみに、沼尻さんが初めてワーグナー作品を手掛けられたのは何の作品だったのでしょうか?

沼尻:名古屋で《さまよえるオランダ人》を振ったのが初めてですね。その次に取り組んだのが、びわ湖ホールでの《トリスタンとイゾルデ》でした。これは上演時間が長いので体力勝負でしたね。オーケストラはトイレの心配をしていました(笑)。

――そうですよね(笑)。もともとワーグナーはお好きだったのですか?

沼尻:新婚旅行がバイロイトだったくらい好きです(笑)。ただ、『リング』を日本で上演するのは大変だと思っていました。二期会が『リング』を全曲上演するのに20年近くかかりましたから。その間に全曲日本初演は、ベルリン·ドイツ·オペラがやってしまいました。びわ湖ホールの芸術監督に就任した当時、『リング』やりましょうと言ったら、館長も含めてスタッフはみんな死んだふりをしていました(笑)。

村島:ちゃんと聞いていましたよ!でも即答はできないですよね。とてつもないお金がかかりますから。

沼尻:《神々の黄昏》が特にお金がかかるのです。空前絶後に長い上、大合唱も必要なので。コロナ前だったから上演を決断できたのかもしれないですね。今だったらとても無理でしょう。

――日本で『リング』全曲を聴ける機会として、音楽ファンにとっても貴重な4年間だったと思います。
今回は、びわ湖ホールさんのオペラについて、お話をお伺いしました。次回は、今年1118日のコンサートにご出演いただく歌手の方々や京都市交響楽団について、お聞かせください!★後編へつづく★


★公演情報「京都コンサートホール×京都市交響楽団プロジェクトVol.4
ワーグナー生誕210年×没後140年『ニーベルングの指環』(ハイライト・沼尻編)」


ウインドクインテット・ソノリテ 上野博昭(フルート)& 村中宏(ファゴット)インタビュー【後半】(2023.10.21 プーランク没後60年 パスカル・ロジェ×ウインドクインテット・ソノリテ「プーランクの横顔」)

投稿日:
京都コンサートホール

2023年、没後60年を迎えるフランスの作曲家、フランシス・プーランク。
京都コンサートホールでは、10月21日(土)にオール・プーランク・プログラムのコンサート「プーランクの横顔」を開催します。出演者は、フランスの巨匠 パスカル・ロジェと、京都にゆかりのある木管五重奏団「ウインドクインテット・ソノリテ」です。
コンサート開催に向けて、「ウインドクインテット・ソノリテ」のメンバーであり、京都市交響楽団の楽団員でもあるフルート奏者の上野博昭さんとファゴット奏者の村中宏さんにインタビューしました。
【前半】の記事ではプーランクに関するお話をお届けしましたが、【後半】ではウインドクインテット・ソノリテの皆さんに関するお話をお届けします。

(聞き手:高野裕子/京都コンサートホールプロデューサー)


高野:今回、ご出演くださる「ウインドクインテット・ソノリテ」のお話をお伺いしたいと思います。メンバーは、フルートの上野博昭さん、ファゴットの村中宏さんに加えて、オーボエの須貝絵里さん、クラリネットの吉田悠人さん、ホルンの深江和音さんですね。
わたしが初めて「ウインドクインテット・ソノリテ」の演奏を拝聴したのは2016年、「ウインドクインテット・ソノリテ 第3回演奏会(青山音楽記念館 バロックザール)」でした。フランセの《木管五重奏曲 第2番》のほかに、プーランクの《2つのノヴェレッテ》を木管五重奏版に編曲した作品も演奏されていましたよね。とても素敵な演奏で、5人のハーモニーがとても瑞々しかったことを覚えています。このコンサートで、質の高いアンサンブルを聴かせた団体に贈られる「青山音楽賞 バロックザール賞」を受賞されました。
それでは、「ウインドクインテット・ソノリテ」を結成されたきっかけをお聞かせくださいますか。

村中宏氏

村中宏氏(以下敬称略):関西のオーケストラの若手管楽器メンバーで「木管五重奏をやりたいな」と思ったことがきっかけですね。結成した当時(2013年)、クラリネットの吉田悠人君は関西フィルハーモニー管弦楽団にいて、ソノリテ前メンバーでホルンの三村総撤君は日本センチュリー交響楽団、フルートの上野君は大阪フィルハーモニー交響楽団、僕は京都市交響楽団にいました。オーボエの須貝絵里さんは色々なオーケストラで吹いていましたね。

上野博昭氏(以下敬称略):それで、5人が初めて出会ったのが、たしか梅田の居酒屋さん。なんていう名前だったっけな、“手羽先じろう”だっけ?

村中:いや、“手羽一郎”だよ(一同笑い)。

上野:よく覚えてるね!そこで初めて5人全員が集まり、出会いました。

高野:皆さん、同年代ですか?

上野:そうですね。僕が一番年上で、須貝さんが一番年下。その差は5歳です。

高野:その席で意気投合されたのですね。

上野:いや、意気投合も別にしていないですね(笑)。

ウインドクインテット・ソノリテ

村中:「まあ、この5人で何かやってみようか」という感じで、とにかくソノリテのメンバーは皆がゆったりしているのです。でも、コンサートを開催すると決めた後は、吉田君が引っ張っていってくれましたね。彼は1回火がつくとガッと物事を進めてくれる、非常にエネルギーがある人で、初回のコンサートの時はホールの予定を押さえたり、チラシを作ったり、色々なアイディアを出してくれました。2014年4月に大阪でデビューコンサートを開催したあと、東京や名古屋等でもコンサートを開催しました。

高野:デビューコンサートでは、手応えを感じましたか?

上野:はい。ただ、とっても緊張しました。僕からすると、ボロボロの出来でしたよ。

村中:でも、コンサートに来てくださったお客さまが「とてもよかったよ!」と声をかけてくださって。自分たちの演奏で皆さんが喜んでくださったこともあり、2回目の開催につながっていきました。

上野:回数を重ねるごとに、アンサンブルとして成長しています。

高野:5人それぞれが個性豊かなメンバーですよね。今日はソノリテを知らないお客さまのために、5人の性格や特徴を教えていただきたいです。

上野博昭氏

上野:村中君は、頼りがいのあるファゴット奏者で何でも吹けます。とても努力家だし、真面目。僕が京都市交響楽団に入団した後も、彼はコンクールを受け続けていましたからね。

高野:すごいですよね。

上野:すごいですよ。尊敬します。プロのオーケストラに入りながらコンクールを受け続けるって、なかなかできないことですよ。オケの看板を背負っているというプレッシャーもあるじゃないですか。

村中:「コンクールを受けるのは嫌だな」と思うし、本当に緊張するのですが、そこでしかできない体験・体感ってあるじゃないですか。そういうものって、オーケストラで演奏する上でも必要だなと思ってコンクールを受けていましたね。

高野:村中さんは、普段から真面目でいらっしゃるのですか。

村中:僕ね、よく真面目だねって言われるんですけど、すごく適当なところもあるし、物忘れも激しいし、気分屋なところもあります。

上野:適当で物忘れが激しくて気分屋なのは、ソノリテのメンバー全員ですよね(笑)。

村中:上野君はとにかく動じないですね。かといって、重苦しいとか堅物とか、そういうタイプではなくて、柔軟性を持ちつつ、自分のペースを守る「ブレない人」なんです。多分、気を遣いすぎるような人だったら、こっちも気疲れしちゃうと思うのですが、上野君の場合は絶対にそうならない。
オーケストラの中で首席フルート奏者としてソロを吹いているところを見ると、気負わずに演奏していて「すごいなぁ」と思います。どっしりしているんですよ。

高野:須貝さんや吉田さん、深江さんについても教えてください。

須貝絵里(オーボエ)

村中:オーボエの須貝さんは、フットワークが軽いです。例えば、ソノリテのコンサートを開催する時に「あれもして、これもしなきゃ・・・」という話になると、彼女は「あ、それは私がやっておきます!」とテキパキ行動してくれる。
最初は年齢が一番下ということで気を遣っていた面もありましたが、今はメンバーと色々と話しながら、積極的に動いてくれています。

吉田悠人(クラリネット)

吉田君は先ほどの話にも出たように、いちど火がつくとエネルギッシュな人。あと、パソコン関係にめちゃくちゃ強いので、チラシ作成や録音、HPやSNSなどの話になると、彼に頼ってしまいます。

深江和音(ホルン)

深江君は、独特のオーラを持っていますよね。ふわっとした空気感を持っているというか。

高野:先日、深江さんに初めてお目にかかりましたが、とても真面目で、優しそうな方でした。

上野:でも、ホルンを吹く時はバリバリっと演奏するのです。

高野:そのギャップが魅力的ですね!
さて、今回はフランスの巨匠パスカル・ロジェさんと一緒にプーランク・プログラムをご披露いただきますが、どのようなことを楽しみにされていますか。

パスカル・ロジェ©武藤 章

村中:海外の演奏家の方と一緒に演奏すると、僕たちが思いつかないようなニュアンスだったりアゴーギクを付けられますよね。音楽って、ちょっとしたさじ加減でがらりと変わるので、今回もロジェさんがどのようなアイデアをお持ちでいらっしゃるのか、とても楽しみにしています。

上野:ロジェさんはプーランクのピアノ作品全曲録音をなさって、これまでたくさんプーランクを演奏されてきているので、僕たちとは経験値が違います。“ロジェさん”という人間味に溢れたプーランク演奏に直に触れられることが、とても楽しみです。

村中:新しい発見を察知できるアンテナを磨いておかないとダメですよね。音楽づくりについて、ロジェさん任せではいけないし。ソノリテでどのようなアプローチができるのか、しっかり準備をしておきたいと思っています。

上野:「僕たちはこういうふうに演奏したい」というものがある場合、それをロジェさんがどのように受け止めて、どう返してくれるのか楽しみです。これは、共演させていただける醍醐味だと思います。ロジェさんとソノリテが共演することで、新たな化学反応が起きれば良いですよね。

高野:それでは最後に、お客さまに向けてメッセージをお願いします。

村中:今回、ロジェさんやピアノ音楽のファンの方がたくさんお越しになると思います。中には、「管楽器のことはよく分からない」と感じられる方もいると思うのですが、そういう方でも「ピアノと管楽器の響きが混ざると、こんなに良いものができるんだ」と思える、新たな世界観を見つけるきっかけづくりのような演奏ができるといいなと考えています。

上野:ロジェさんとウインドクインテット・ソノリテが共演することで、京都ならではの独自のコンサートになると思います。プーランクに興味がある方やロジェさんのファンの方、管楽器が聴いてみたい方など、色々な方々にお越しいただけたらなぁと思います。
このコンサートは、「U-30」という30歳以下の方はチケット代が半額になるという、お得なチケットもありますので、若いお客さまにもたくさんお越しいただきたいと思っています!

高野:貴重なお話をたくさんお聞かせくださいまして、本当にありがとうございました。10月21日のコンサートを楽しみにしています。


上野 博昭(うえの・ひろあき)

 

 

 

 

岐阜市出身。名古屋芸術大学音楽学部器楽科卒業。大阪交響楽団(旧大阪シンフォニカー交響楽団)フルート副首席奏者、大阪フィルハーモニー交響楽団フルートトップ奏者を経て、2017年2月より京都市交響楽団の首席フルート奏者として就任し現在に至る。神戸女学院大学、大阪芸術大学講師。中学・高校の吹奏楽指導、各地方面での講習会開催、コンクールの審査員などを務める。 レッシュプロジェクトマスター級トレーナーの資格を取得。

村中 宏(むらなか・ひろし)

東京藝術大学をアカンサス音楽賞、同声会賞を受賞し卒業。ソリストとしてヨルマ・パヌラ指揮、藝大フィルハーモニア管弦楽団と共演。宝塚ベガ音楽コンクール第1位、兵庫県知事賞受賞。大阪国際音楽コンクール最高位。日本管打楽器コンクール第3位。JILA音楽コンクール室内楽部門第1位。松方ホール音楽賞受賞。NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」に出演。京都市交響楽団ファゴット奏者。

【公演情報】
プーランク没後60年 パスカル・ロジェ×ウインドクインテット・ソノリテ 「プーランクの横顔」
2023年10月21日(土)15:00開演(14:30開場)
ピアノ:パスカル・ロジェ
木管五重奏:ウインドクインテット・ソノリテ
(フルート:上野博昭、オーボエ:須貝絵里、クラリネット:吉田悠人、ファゴット:村中宏、ホルン:深江和音)
プログラム:オール・プーランク・プログラム
クラリネット・ソナタ、3つのノヴェレッテ、《15の即興曲》より第13番・第15番・第6番、フルート・ソナタ、六重奏曲 ほか
詳細はこちら⇒コンサート情報のページ

ウインドクインテット・ソノリテ 上野博昭(フルート)& 村中宏(ファゴット)インタビュー【前半】(2023.10.21 プーランク没後60年 パスカル・ロジェ×ウインドクインテット・ソノリテ「プーランクの横顔」)

投稿日:
京都コンサートホール

「軽妙洒脱でユーモラス、時々メランコリック」な音楽を書いた、フランスの作曲家 フランシス・プーランク。2023年は、そんなプーランクの没後60年の年にあたります。
京都コンサートホールでは、プーランクのピアノ曲や室内楽作品にフィーチャーしたコンサート「プーランクの横顔」を10月21日(土)に開催し、さまざまな角度から“プーランクの横顔”を投影することにより、作曲家の魅力を再発見します。出演者は、フランスの巨匠 パスカル・ロジェと、京都にゆかりのある木管五重奏団「ウインドクインテット・ソノリテ」です。
今回は、「ウインドクインテット・ソノリテ」のメンバーであり、京都市交響楽団の楽団員でもあるフルート奏者の上野博昭さんとファゴット奏者の村中宏さんにインタビューし、プーランクやソノリテのメンバーに関するお話を伺いました。【前半】と【後半】の2回にわたり、お届けします。

(聞き手:高野裕子/京都コンサートホールプロデューサー)


高野:今年はプーランク没後60年の年ということで、去年(2022年)から「2023年はプーランクの演奏会をするぞ!」と意気込んでいました。
プーランクって、同郷・同時代人のドビュッシーやラヴェルなどに比べると、日本ではあまり親しまれていない作曲家ですよね。

上野博昭氏(以下、敬称略):そうですね、オーケストラ作品をあまり書いていないからですかね。

村中宏氏(以下、敬称略):僕は京都市交響楽団に10年間在籍しているのですが、定期演奏会にプーランクの作品が出てきたという記憶は、あまりないのですよね。

高野:国内では鑑賞機会の少ないプーランクですが、実際に聴いてみると本当に魅力的な音楽なんですよね。今年はプーランクの記念の年ということで、これをきっかけに、たくさんの方々にプーランクの魅力をあらためて知っていただきたいなと考えています。
ところでお二人は、当ホールのSNSにアップロードしたパスカル・ロジェさんの動画はご覧になりましたか?

上野:はい、観ました。いやぁ、もう、ロジェさんの(プーランクとの出会いに関する)エピソードには敵いませんよね。だって、生まれる前、お母さんのお腹の中でプーランクの音楽を聴いていらっしゃったんですよね。

高野:そうそう、とても素敵なエピソードでした。
今日は、お二人のプーランクとの出会いについても教えてくださいますか。

上野:僕とプーランクの出会いは、中学生時代です。プーランクの《フルート・ソナタ》がきっかけでした。この作品は、購入するフルートのCDに必ずと言って良いほど入っている、名曲中の名曲ですからね。
フルート吹きにとってプーランクはけっこう身近な作曲家で、彼のフルート・ソナタはフルート吹きがまず最初に憧れる曲でもあります。

高野:ちなみに、初めてプーランクの《フルート・ソナタ》を演奏されたのは何歳ですか。

上野博昭氏

上野:実は、人前で初めて演奏したのはついこの間なんです(笑)。
演奏しようと思えばできるけれど、音楽の深いところに踏み込もうとすると、ちょっと勇気がいる。人前で軽々しく演奏できないんですよね。なぜなら、皆がそれぞれに考える「プーランク」があるから。
だから「俺はこう演奏する!」と思って演奏しても、それが受け入れてもらえるかどうか分からない難しさがあるのです。

高野:村中さんとプーランクの出会いはいつですか?

村中宏氏

村中:プーランクはファゴット独奏のために曲を書かなかったから、近い存在の作曲家ではなかったですね。
ただ、ファゴットが入っている作品は3つあります。クラリネットとファゴットのデュオやオーボエ・ファゴット・ピアノのトリオ、そして今回の演奏会でも演奏する、ピアノと木管五重奏のための六重奏曲です。
でもプーランクって、本当に難しい。例えば、クラリネットとファゴットのデュオは、クラリネットの友人と一緒に「よし、ちょっとやってみよう」と演奏したことがあるのですが、これがなかなか形にならないのです。
技術的にハイレベルなことを要求されるという難しさもありますが、ジャズっぽい要素が入っていて、ぱっと吹いてみてもサマにならない。クラシックだけではなく、色々な曲を知っていて、技術的にも上達した人が演奏してはじめて、かっこよく演奏できる曲なんだと思います。

高野:《六重奏曲》も難しい曲ですか?

村中:はい、難しいですね。コンサートのプログラムに初めて入れたのは大学生の頃でしたが、その頃から今にいたるまで、難しいなと思います。

高野:難しいというのは、技術的な難しさでしょうか?

村中:そうですね。プーランクは管楽器が好きだったそうで、楽器のことをよく熟知しているなぁと思います。それぞれの楽器が得意とする技術を使っているのですが、逆に、それぞれの楽器が苦手とすることもよく分かっているのです。楽器の短所をうまく音楽に取り入れている箇所が多々あって、それが音楽の幅の拡がりにも繋がっているなと思います。

高野:例えばファゴットで言うと、どのような難しいことを要求されますか。

村中:ファゴットって音が小さな楽器で、ピアノの左手パートの音を重ねることが多い。ファゴット=伴奏、と思われがちなのですが、プーランクは、その音が小さいという短所を逆手に、ファゴットのソロを入れるのです(笑)。《六重奏曲》でもそのような箇所がありますが、ファゴット以外の5人は音を出さず、ファゴット1人に吹かせるのです。そして、次の音楽に繋げていく。「プーランクは楽器のことをよく分かっているなぁ」と感心します。

高野:いま村中さんが、プーランクの楽器の扱いの巧妙さについてお話してくださいましたが、フルートに関しても同意見でいらっしゃいますか。

上野:プーランクの《フルート・ソナタ》は、1957年にストラスブールで初演を行ったフルート奏 者のジャン=ピエール・ランパル (1922-2000) と楽曲制作段階から密接な意見交換を交わしながら作られているので、フルート奏者にとって演奏しやすいように色々と変更されることは予測されます。ほぼ2人の共作だと思ってもいいのではないかとさえ思います。2人が出会わなければ世の中に残らなかったかもしれないのですし。
つまり、プーランクは、演奏家の意見を取り入れることを非常に大事にしていた作曲家なんじゃないかと思います。

高野:このようなお話って、演奏家ならではのお話ですよね。楽譜や書籍を眺めているだけでは分からない、貴重なお話です。
わたしはピアノでプーランクを演奏したことがありますが、楽譜を見ているだけではぜんぜん分かりませんが、実際に音にしてみると「これぞ、プーランク!」という響きになるのが不思議でした。

上野:《六重奏曲》にも、プーランクらしい箇所がたくさん出てきます。

高野:お二人は、「プーランクらしさ」ってどのようなものと考えていらっしゃいますか。

村中:演奏会のチラシに「軽妙洒脱でユーモラス、時々メランコリック」って書いてあるでしょう。まさにこの通りだと思うんです。真正面から「私、プーランクなんです」っていう音楽じゃなくて、ちょっと斜めから見ているようなニヒルな部分があったり、冗談っぽい部分があったり。それぞれの楽器で色々なことをやらされて、一人ひとりがとっても個性的なメロディを吹いているんですよね。それがもう、次から次へ、目まぐるしく現れるんです。
初めて聴く人は「面白い!」と思ってもらえると思いますが、「次、どうなるの?えっ、次は何が出てくるの!」って疲れちゃうかもしれません(笑)。
一般的な曲だったら、だいたい「次はこういう展開だろうな」と予想がつくじゃないですか。プーランクの《六重奏曲》は、予想がつかないです。まるでパズルのピースのように音楽が並んでいて、最終的に大きなひとつの作品になるようなイメージです。

上野:パズルのような音楽だから、一瞬なんですよね。ひとつ吹いたら、またすぐ次の音楽がやってくる。

高野:よくわかります。わたしがピアノでプーランクを弾いていた時、その切り替えが難しいなと思っていました。譜面上は難しい音の並びではないのですが、音にした途端にださくなっちゃう。

上野:そうなんですよ。何が難しいって、奏者一人ひとりがめちゃくちゃうまくないと、プーランクは音楽として成り立たないんですよ。名曲中の名曲なのですが、全員がうまくないと成り立たないので、なかなか敷居の高い作品でもあります。

村中:今回は大ピアニストのパスカル・ロジェさんとこの名曲を演奏できるので、フレンチなあの雰囲気、お洒落な感じ、そういうのを一緒に表現したいですね。
お客さまにはぜひ、6人が対等に音楽をやっている面白さというものを感じていただきたいです。

(【後半】に続く)


上野 博昭(うえの・ひろあき)

岐阜市出身。名古屋芸術大学音楽学部器楽科卒業。大阪交響楽団(旧大阪シンフォニカー交響楽団)フルート副首席奏者、大阪フィルハーモニー交響楽団フルートトップ奏者を経て、2017年2月より京都市交響楽団の首席フルート奏者として就任し現在に至る。神戸女学院大学、大阪芸術大学講師。中学・高校の吹奏楽指導、各地方面での講習会開催、コンクールの審査員などを務める。 レッシュプロジェクトマスター級トレーナーの資格を取得。

村中 宏(むらなか・ひろし)

東京藝術大学をアカンサス音楽賞、同声会賞を受賞し卒業。ソリストとしてヨルマ・パヌラ指揮、藝大フィルハーモニア管弦楽団と共演。宝塚ベガ音楽コンクール第1位、兵庫県知事賞受賞。大阪国際音楽コンクール最高位。日本管打楽器コンクール第3位。JILA音楽コンクール室内楽部門第1位。松方ホール音楽賞受賞。NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」に出演。京都市交響楽団ファゴット奏者。

【公演情報】
プーランク没後60年
パスカル・ロジェ×ウインドクインテット・ソノリテ
「プーランクの横顔」
2023年10月21日(土)15:00開演(14:30開場)
ピアノ:パスカル・ロジェ
木管五重奏:ウインドクインテット・ソノリテ
(フルート:上野博昭、オーボエ:須貝絵里、クラリネット:吉田悠人、ファゴット:村中宏、ホルン:深江和音)
プログラム:オール・プーランク・プログラム
クラリネット・ソナタ、3つのノヴェレッテ、《15の即興曲》より第13番・第15番・第6番、フルート・ソナタ、六重奏曲 ほか
詳細はこちら⇒コンサート情報のページ

オルガニスト 福本茉莉 インタビュー(2023.09.30 オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.72)

投稿日:
京都コンサートホール

京都コンサートホールの人気シリーズ「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズ」の72回目(9/30)は、世界の名だたるコンクールを制覇した福本茉莉さんをお迎えします。

福本さんにとって京都初リサイタルとなる本コンサートに向けて、Zoomでインタビューを行いました。
留学先としてドイツを選んだ経緯や、ドイツを中心とした演奏活動について、そして今回演奏してくださるプログラムなど、様々なお話を伺いました。ぜひ最後までご覧ください!

――ご無沙汰しております!前回は2020年9月に「第24回京都の秋 音楽祭 開会記念コンサート」にソリストでご出演いただきましたので、今回の公演は3年ぶりのご登場となります。前回のメールインタビューではオルガンを始めたきっかけを伺いました。その後東京藝術大学でオルガンを学ばれて、ドイツのハンブルク音楽演劇大学へ留学されましたが、なぜ留学先にドイツを選ばれたのでしょうか?

ヴォルフガング・ツェラー先生と

福本茉莉さん(以下敬称略):大学入学直後から、やりたいことや自分に合うことが何かをずっと考えていました。レパートリーを考えた時に、バッハが遠い存在になるのが嫌だったので、バッハが得意な先生を探し始めたんです。

20歳の時、ハンブルク音楽演劇大学のヴォルフガング・ツェラー先生の講習会を受けに行きました。その後、様々なバッハのCDを聴きましたが、1音目から心を持っていかれたのがやはりツェラー先生だったので、先生に就くことに決めました。

また同時期に、歴史的なオルガンを見にドイツを半年ほど1人旅をした際、ハンブルク近くのシュターデという町にある「聖コスメ教会」に、北ドイツで有名なオルガン製作者アルプ・シュニットガーが作った楽器があり、どうしても弾いてみたくて当教会のオルガニスト マルティン・ベーカー氏にコンタクトを取りました。
そして初めて弾いた時に「こんなにも綺麗な音が出る楽器が世の中にあるのか!」と衝撃を受けたのです。まるで宝石箱をぶちまけたかのような、キラキラと輝く音でした。
この楽器との出会いもハンブルクに行こうと思った理由の一つです。

ちなみに、今年念願叶ってこの楽器でCDの録音(発売は来年予定)をしたところです!

――そんな運命的な出会いがあったのですね。留学後はどのように進路を決めたのでしょうか?

福本さん:もともとは2年で日本へ帰る予定でしたが、留学1年目が終わった時に受けた「第7回武蔵野国際オルガンコンクール」で優勝したことにより、状況が変わりました。
ドイツでは、留学した頃から定期的に仕事をいただいていたので、ドイツに残った方が仕事があると考えました。そして、ドイツでオルガンの仕事をするためには、教会音楽家の資格を持っている方が有利なので、演奏の博士課程と並行して、教会音楽を勉強し直し、演奏活動をしながら計8年間の学生生活を送りました。
最後の学期中に、ヴァイマール・フランツ・リスト音楽大学の常勤講師の公募があったので応募したところ、採用していただくことになりました。

――そうだったのですね!大学の常勤講師というのはきっと狭き門なのでしょうね。

福本さん:そうですね、大学のポストは公募されること自体が少ないので、なかなか難しいと言われています。

――その後、ポーランドのヴロツワフ国立音楽フォーラム(NFM)でアーティスト・イン・レジデンスを務めていらっしゃいましたね。

福本さん:はい、オファーをいただき、2020/2021シーズンのアーティストを務めました。ただ1公演を終えたところでコロナ禍になってしまい、子どものためのプロジェクトなど様々な企画があったのですが、残念ながら実現できませんでした。
ですが、演奏会だけでもやろうということで、残りのコンサートを昨年から今年にかけて実施しました。またその一環で、パスカル・ロフェ氏指揮のNFMヴロツワフ・フィルハーモニー管弦楽団とレコーディングも行いました。なお、そのCD(エルジュビエタ・シコラ:協奏曲集)は、今年『レコード芸術』の特選盤に選ばれました!

バロック・オーケストラとヘンデルのオルガン協奏曲を演奏

パスカル・ロフェ氏とシコラのオルガン協奏曲を演奏

――そうだったのですね。そのほかにドレスデンの聖母教会でも定期的にに演奏されているとSNSで拝見しました。これはどのような経緯だったのでしょうか

ドレスデン聖母教会にて

福本さん:突然メールでオファーをいただきまして(笑)、去年の12月からオルガニストの主任代理を務めています。
この聖母教会は、第二次世界大戦中に爆撃を受け崩壊し、その後約45年間瓦礫のまま放置されていました。ドイツの東西統一の時に資金を募って再建されたため、ドイツ人にとって再統一や再び立ち上がったという想いを象徴する、歴史的な建物なんです。
教会と密接に関わる仕事は初めてで、ありとあらゆる経験をさせていただいています。具体的には礼拝と演奏会、そして来年度のオルガン・シリーズのキュレーターも任されています。

――すごいですね!演奏活動と大学の常勤講師の仕事を並行されている今の生活はいかがですか?

福本さん:今のところ、やりたいことが全部できているなと感じています。
アクティブに演奏活動をしながら、自分が経験したものを生徒たちに教えられるのは、とてもいい環境だと思います。

――生徒さんたちがとても羨ましいです。多忙な生活を送られているかと思いますが、練習は大学でなさっているのでしょうか。

福本さん:実は大学の楽器では練習できないので、練習楽器の無い状態が4年半続いています。鍵を貸してくれる知り合いの教会や、別の演奏会のリハーサルの空き時間を見つけて練習をしています。

 ――そうだったのですね。ちなみにプロフィール写真(本記事一番最初の写真)はどちらの教会で撮影されたのでしょうか。

クライス社長と

福本さん:オルガン・ビルダーのクライス社の社長に紹介していただいた、ドイツのボンにある教会です。この教会は、京都コンサートホールと同じクライス社のオルガンなんですよ。ちなみにポーランドのヴロツワフ国立音楽フォーラム(NFM)の楽器もクライス社の楽器でした。

――なんだかご縁を感じます。クライス社長は今年の5月に当ホールにもいらっしゃいました。今年はどこの国で演奏を予定されていますか?

福本さん:ドイツがメインですが、日本も少し、あとはオーストリアやポーランドでも演奏を予定しています。

――今回の京都公演ではオール・ドイツ音楽・プログラムを披露してくださいますね。

福本さん:メインにレーガーを置きたかったので、レーガーにつなげることを考えつつ、皆さんに馴染みのある作曲家で揃えて、聴きやすいプログラムを組みました。
ベートーヴェンの〈アレグレット〉は可愛らしい曲ですし、リストの《神は我がやぐら》はオーケストラが祝祭的に演奏するために書かれた曲なので、気負わずにお聴きいただけると思います。

――メインのレーガーは大曲ですね。

福本さん:レーガー《序奏、パッサカリアとフーガ ホ短調》は重量級の曲ではありますが、音色の変化がはっきりしており、色んな音を楽しんでいただけると思います。レーガーの中でも聴きやすい作品で、3部に分かれています。最後の「パッサカリア」は、同じテーマが変奏していくので、初めて聴く方でもわかりやすいと思います。
またレーガーを例えると水戸黄門なんです(笑)。何があったとしても最後はハッピーエンドで、そこまでの道筋もわかりやすいんです。
ぜひ音のシャワーを浴びに、遊びに来ていただけたら嬉しいです。

――まさか水戸黄門が例えに出て来るとは思いませんでした(笑)。この作品はよく弾かれていますか。

福本さん:東京藝術大学の修士リサイタルで初めて弾いた後は、ニュルンベルクのコンクール決勝やハンブルクの修了試験、スイスのリサイタル、今年のウィーン・デビューとなったリサイタルでも演奏しました。日本の演奏会でこの作品を弾くのは初めてだと思います。

レーガーを弾いたウィーン・デビュー(イエズス会教会)

――大事な節目で演奏されてきた曲なのですね!福本さんにとってドイツ音楽の魅力は何でしょうか?

福本さん:ドイツ音楽と一番比較しやすいフランス音楽は、1オクターブ以上の音域で作られる「開離和声」が多く、透明感があって開かれた印象があります。
対してドイツ音楽は、1オクターブの中に音を詰め込んだものが多く、旨味がぎっしり詰まっている感じがします。その極みがレーガーだと思っています。

――それでは最後に、京都のお客様にメッセージをお願いいたします。

福本:3年ぶりに京都コンサートホールに帰ってくることができ、そして関西圏では初めてのリサイタルを弾かせていただけること、とても嬉しく思っています。日本でリサイタルという形で、私が大好きな作曲家であるレーガーを取り上げるのが実は今回が初めてなので、生誕150年を記念するレーガーイヤーにこのような機会をいただけて感謝しております。
今回はこのレーガーの大作をメインに、またドイツのオルガン音楽の歴史には欠かせないバッハやメンデルスゾーン、リストらの作品と共に、多彩なオルガンの音色をお楽しみいただきます。
ライブでしか味わえない、全身が震えるようなオルガンの醍醐味をぜひ、当日会場で満喫しに遊びにいらしてください!

リンツのブルックナーハウスにて(C)Floris Fortin Fotografie

――色々とお話を聞かせてくださってありがとうございました。9月30日を楽しみにしております!

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