ウインドクインテット・ソノリテ 上野博昭(フルート)& 村中宏(ファゴット)インタビュー【後半】(2023.10.21 プーランク没後60年 パスカル・ロジェ×ウインドクインテット・ソノリテ「プーランクの横顔」)

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京都コンサートホール

2023年、没後60年を迎えるフランスの作曲家、フランシス・プーランク。
京都コンサートホールでは、10月21日(土)にオール・プーランク・プログラムのコンサート「プーランクの横顔」を開催します。出演者は、フランスの巨匠 パスカル・ロジェと、京都にゆかりのある木管五重奏団「ウインドクインテット・ソノリテ」です。
コンサート開催に向けて、「ウインドクインテット・ソノリテ」のメンバーであり、京都市交響楽団の楽団員でもあるフルート奏者の上野博昭さんとファゴット奏者の村中宏さんにインタビューしました。
【前半】の記事ではプーランクに関するお話をお届けしましたが、【後半】ではウインドクインテット・ソノリテの皆さんに関するお話をお届けします。

(聞き手:高野裕子/京都コンサートホールプロデューサー)


高野:今回、ご出演くださる「ウインドクインテット・ソノリテ」のお話をお伺いしたいと思います。メンバーは、フルートの上野博昭さん、ファゴットの村中宏さんに加えて、オーボエの須貝絵里さん、クラリネットの吉田悠人さん、ホルンの深江和音さんですね。
わたしが初めて「ウインドクインテット・ソノリテ」の演奏を拝聴したのは2016年、「ウインドクインテット・ソノリテ 第3回演奏会(青山音楽記念館 バロックザール)」でした。フランセの《木管五重奏曲 第2番》のほかに、プーランクの《2つのノヴェレッテ》を木管五重奏版に編曲した作品も演奏されていましたよね。とても素敵な演奏で、5人のハーモニーがとても瑞々しかったことを覚えています。このコンサートで、質の高いアンサンブルを聴かせた団体に贈られる「青山音楽賞 バロックザール賞」を受賞されました。
それでは、「ウインドクインテット・ソノリテ」を結成されたきっかけをお聞かせくださいますか。

村中宏氏

村中宏氏(以下敬称略):関西のオーケストラの若手管楽器メンバーで「木管五重奏をやりたいな」と思ったことがきっかけですね。結成した当時(2013年)、クラリネットの吉田悠人君は関西フィルハーモニー管弦楽団にいて、ソノリテ前メンバーでホルンの三村総撤君は日本センチュリー交響楽団、フルートの上野君は大阪フィルハーモニー交響楽団、僕は京都市交響楽団にいました。オーボエの須貝絵里さんは色々なオーケストラで吹いていましたね。

上野博昭氏(以下敬称略):それで、5人が初めて出会ったのが、たしか梅田の居酒屋さん。なんていう名前だったっけな、“手羽先じろう”だっけ?

村中:いや、“手羽一郎”だよ(一同笑い)。

上野:よく覚えてるね!そこで初めて5人全員が集まり、出会いました。

高野:皆さん、同年代ですか?

上野:そうですね。僕が一番年上で、須貝さんが一番年下。その差は5歳です。

高野:その席で意気投合されたのですね。

上野:いや、意気投合も別にしていないですね(笑)。

ウインドクインテット・ソノリテ

村中:「まあ、この5人で何かやってみようか」という感じで、とにかくソノリテのメンバーは皆がゆったりしているのです。でも、コンサートを開催すると決めた後は、吉田君が引っ張っていってくれましたね。彼は1回火がつくとガッと物事を進めてくれる、非常にエネルギーがある人で、初回のコンサートの時はホールの予定を押さえたり、チラシを作ったり、色々なアイディアを出してくれました。2014年4月に大阪でデビューコンサートを開催したあと、東京や名古屋等でもコンサートを開催しました。

高野:デビューコンサートでは、手応えを感じましたか?

上野:はい。ただ、とっても緊張しました。僕からすると、ボロボロの出来でしたよ。

村中:でも、コンサートに来てくださったお客さまが「とてもよかったよ!」と声をかけてくださって。自分たちの演奏で皆さんが喜んでくださったこともあり、2回目の開催につながっていきました。

上野:回数を重ねるごとに、アンサンブルとして成長しています。

高野:5人それぞれが個性豊かなメンバーですよね。今日はソノリテを知らないお客さまのために、5人の性格や特徴を教えていただきたいです。

上野博昭氏

上野:村中君は、頼りがいのあるファゴット奏者で何でも吹けます。とても努力家だし、真面目。僕が京都市交響楽団に入団した後も、彼はコンクールを受け続けていましたからね。

高野:すごいですよね。

上野:すごいですよ。尊敬します。プロのオーケストラに入りながらコンクールを受け続けるって、なかなかできないことですよ。オケの看板を背負っているというプレッシャーもあるじゃないですか。

村中:「コンクールを受けるのは嫌だな」と思うし、本当に緊張するのですが、そこでしかできない体験・体感ってあるじゃないですか。そういうものって、オーケストラで演奏する上でも必要だなと思ってコンクールを受けていましたね。

高野:村中さんは、普段から真面目でいらっしゃるのですか。

村中:僕ね、よく真面目だねって言われるんですけど、すごく適当なところもあるし、物忘れも激しいし、気分屋なところもあります。

上野:適当で物忘れが激しくて気分屋なのは、ソノリテのメンバー全員ですよね(笑)。

村中:上野君はとにかく動じないですね。かといって、重苦しいとか堅物とか、そういうタイプではなくて、柔軟性を持ちつつ、自分のペースを守る「ブレない人」なんです。多分、気を遣いすぎるような人だったら、こっちも気疲れしちゃうと思うのですが、上野君の場合は絶対にそうならない。
オーケストラの中で首席フルート奏者としてソロを吹いているところを見ると、気負わずに演奏していて「すごいなぁ」と思います。どっしりしているんですよ。

高野:須貝さんや吉田さん、深江さんについても教えてください。

須貝絵里(オーボエ)

村中:オーボエの須貝さんは、フットワークが軽いです。例えば、ソノリテのコンサートを開催する時に「あれもして、これもしなきゃ・・・」という話になると、彼女は「あ、それは私がやっておきます!」とテキパキ行動してくれる。
最初は年齢が一番下ということで気を遣っていた面もありましたが、今はメンバーと色々と話しながら、積極的に動いてくれています。

吉田悠人(クラリネット)

吉田君は先ほどの話にも出たように、いちど火がつくとエネルギッシュな人。あと、パソコン関係にめちゃくちゃ強いので、チラシ作成や録音、HPやSNSなどの話になると、彼に頼ってしまいます。

深江和音(ホルン)

深江君は、独特のオーラを持っていますよね。ふわっとした空気感を持っているというか。

高野:先日、深江さんに初めてお目にかかりましたが、とても真面目で、優しそうな方でした。

上野:でも、ホルンを吹く時はバリバリっと演奏するのです。

高野:そのギャップが魅力的ですね!
さて、今回はフランスの巨匠パスカル・ロジェさんと一緒にプーランク・プログラムをご披露いただきますが、どのようなことを楽しみにされていますか。

パスカル・ロジェ©武藤 章

村中:海外の演奏家の方と一緒に演奏すると、僕たちが思いつかないようなニュアンスだったりアゴーギクを付けられますよね。音楽って、ちょっとしたさじ加減でがらりと変わるので、今回もロジェさんがどのようなアイデアをお持ちでいらっしゃるのか、とても楽しみにしています。

上野:ロジェさんはプーランクのピアノ作品全曲録音をなさって、これまでたくさんプーランクを演奏されてきているので、僕たちとは経験値が違います。“ロジェさん”という人間味に溢れたプーランク演奏に直に触れられることが、とても楽しみです。

村中:新しい発見を察知できるアンテナを磨いておかないとダメですよね。音楽づくりについて、ロジェさん任せではいけないし。ソノリテでどのようなアプローチができるのか、しっかり準備をしておきたいと思っています。

上野:「僕たちはこういうふうに演奏したい」というものがある場合、それをロジェさんがどのように受け止めて、どう返してくれるのか楽しみです。これは、共演させていただける醍醐味だと思います。ロジェさんとソノリテが共演することで、新たな化学反応が起きれば良いですよね。

高野:それでは最後に、お客さまに向けてメッセージをお願いします。

村中:今回、ロジェさんやピアノ音楽のファンの方がたくさんお越しになると思います。中には、「管楽器のことはよく分からない」と感じられる方もいると思うのですが、そういう方でも「ピアノと管楽器の響きが混ざると、こんなに良いものができるんだ」と思える、新たな世界観を見つけるきっかけづくりのような演奏ができるといいなと考えています。

上野:ロジェさんとウインドクインテット・ソノリテが共演することで、京都ならではの独自のコンサートになると思います。プーランクに興味がある方やロジェさんのファンの方、管楽器が聴いてみたい方など、色々な方々にお越しいただけたらなぁと思います。
このコンサートは、「U-30」という30歳以下の方はチケット代が半額になるという、お得なチケットもありますので、若いお客さまにもたくさんお越しいただきたいと思っています!

高野:貴重なお話をたくさんお聞かせくださいまして、本当にありがとうございました。10月21日のコンサートを楽しみにしています。


上野 博昭(うえの・ひろあき)

 

 

 

 

岐阜市出身。名古屋芸術大学音楽学部器楽科卒業。大阪交響楽団(旧大阪シンフォニカー交響楽団)フルート副首席奏者、大阪フィルハーモニー交響楽団フルートトップ奏者を経て、2017年2月より京都市交響楽団の首席フルート奏者として就任し現在に至る。神戸女学院大学、大阪芸術大学講師。中学・高校の吹奏楽指導、各地方面での講習会開催、コンクールの審査員などを務める。 レッシュプロジェクトマスター級トレーナーの資格を取得。

村中 宏(むらなか・ひろし)

東京藝術大学をアカンサス音楽賞、同声会賞を受賞し卒業。ソリストとしてヨルマ・パヌラ指揮、藝大フィルハーモニア管弦楽団と共演。宝塚ベガ音楽コンクール第1位、兵庫県知事賞受賞。大阪国際音楽コンクール最高位。日本管打楽器コンクール第3位。JILA音楽コンクール室内楽部門第1位。松方ホール音楽賞受賞。NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」に出演。京都市交響楽団ファゴット奏者。

【公演情報】
プーランク没後60年 パスカル・ロジェ×ウインドクインテット・ソノリテ 「プーランクの横顔」
2023年10月21日(土)15:00開演(14:30開場)
ピアノ:パスカル・ロジェ
木管五重奏:ウインドクインテット・ソノリテ
(フルート:上野博昭、オーボエ:須貝絵里、クラリネット:吉田悠人、ファゴット:村中宏、ホルン:深江和音)
プログラム:オール・プーランク・プログラム
クラリネット・ソナタ、3つのノヴェレッテ、《15の即興曲》より第13番・第15番・第6番、フルート・ソナタ、六重奏曲 ほか
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