【フィラデルフィア管弦楽団 特別連載④】指揮者 ヤニック・ネゼ=セガン特別メールインタビュー

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京都コンサートホール

2019年11月3日(日)に「第23回京都の秋 音楽祭」のメイン公演の一つとして14年ぶりの京都公演を行う、アメリカの名門「フィラデルフィア管弦楽団」。本公演やアーティストの魅力をお伝えすべく、当ブログにて「特別連載」を行っております。

第4回は音楽監督のヤニック・ネゼ=セガン氏にメールインタビューを実施し、フィラデルフィア管弦楽団の魅力や今後の展望をはじめ、ご自身の指揮者としてのエピソードなどを語っていただきました。どうぞお楽しみください。

Yannick Nézet-Séguin portrait at Kimmel Center for the Philadelphia Orchestra, 11/8/16. Photo by Chris Lee

――この度は、お忙しい中インタビューをお引き受けいただき、ありがとうございます。ネゼ=セガンさんが音楽監督に就任してから7年経ちましたが、オーケストラはどのように変わりましたか?

ヤニック・ネゼ=セガンさん(以下敬称略):フィラデルフィア管弦楽団とは、2008年に初共演して以来の特別な関係です。私たちの親密な関係性は、この名門オーケストラをけん引してこられた歴代の指揮者の上に築き上げられているものであり、何年もかけて育まれたものです。私たちの目標は、音楽の喜びを、地元フィラデルフィア、アメリカ、そして世界中の聴衆と分かち合うことです。

The Philadelphia Orchestra performs on New Years Eve, Thursday, Dec. 31, 2015, in Philadelphia. (Photo by Jessica Griffin)

――フィラデルフィア管弦楽団の特徴や、アメリカや世界のオーケストラの中での位置づけをどのように捉えていますか?

ネゼ=セガン:フィラデルフィア管弦楽団は、ご存じのとおり、その唯一無二のサウンドがよく知られていますし、また、素晴らしく創造性に満ちた豊かな歴史を誇ります。私たちはツアーでの功績を誇りに思っており、世界中のオーケストラファンとともに築いてきた関係性を大切にしています。ツアーでは、ただ単に美しいコンサートを行うだけではなく、その土地の環境にどっぷりと浸かり、ツアーで出会う人と人との交流を大切にしています。

――フィラデルフィア管と共に現在取り組まれている活動やプロジェクト、そして今後の展望について教えてください。

ネゼ=セガン:とてもワクワクした気持ちで2019-2020年シーズンを迎えています。今シーズンは、女性作曲家の作品や女性指揮者を取り上げ、ベートーヴェンの交響曲全曲を現代作品と一緒に演奏することで生誕250年を祝福し、さらに、声楽作品からインスパイアされた編曲作品をお届けします。私たちはみなさんと音楽を共有することにより、人生を豊かにすることを望んでいます。そしてその実現に大きな責任感を持って取り組んでいます。

――来日公演ソリストのハオチェン・チャンについて、共演経験はありますか?ハオチェン・チャンの印象を教えてください。

ネゼ=セガン:ハオチェン・チャンは、たいへん優れた才能ある音楽家なので、共演できて嬉しいです。彼はフィラデルフィアのカーティス音楽院で学び、私たちオーケストラメンバーと固い信頼関係を築いてきました。彼は音楽・技術の両面において、考え抜いて作品を解釈して演奏します。共演者として理想的です。2018年春のオーケストラツアーでは、ハオチェンと共演できて嬉しかったですし、またこのツアーで一緒に演奏できることを楽しみにしています。

(C)Jan Regan

――指揮者になろうと思ったきっかけを教えていただけますか。

ネゼ=セガン:小さい頃から指揮者になりたいと思っていました。途中まではピアノを弾いて、それが楽しかったのですが、合唱団で歌うということを始めてからは集団で音楽を作るということが、どれだけ自分を活気づけ、良い刺激を与えてくれるかに気付きました。グループの中で自分の役割を持つこと、そして他人を助けることに喜びを見出していましたので、指揮をするということは自分にしっくり来ました。私はこの仕事をしていて幸せです。世界中の音楽家と素晴らしい音楽をつくることが出来ますし、作品を通して世界中の聴衆の方々に音楽を聴く喜びを伝えています。

――就寝前もベッドでスコアを読むと聞きましたが、オフの日はどうのように過ごされていますか?

ネゼ=セガン:音楽から離れているときは、フィラデルフィアか、ニューヨーク、モントリオールの自宅で、パートナーのピエールと3匹の猫と一緒にゆっくり過ごすようにしています。そしてまた、自分自身の体の状態を良く保つための時間を取るようにしています。例えば、ランニングをしたり、散歩に出かけたり、ヨガをしたりといったことですね。

Yannick Nézet-Séguin conducts the Philadelphia Orchestra at Carnegie Hall with Gil Shaham as soloist, 10/13/15. Photo by Chris Lee

――指揮をする時、どんなことを考えてイメージして振っていますか?

ネゼ=セガン:作曲者が何を感じ、伝えようとしているのかを考えています。

 

――今回のプログラムについて、選曲意図と聴きどころを教えてください。

ネゼ=セガン:今回私たちは、非常に有名なラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を演奏します。偉大な作曲家、ピアニスト、指揮者であるラフマニノフは、フィラデルフィア管弦楽団と深い繋がりがありました。彼は晩年、フィラデルフィア管弦楽団のサウンドを想像しながら作曲した、と話しているのです。そしてプログラム最後は、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界から」で華々しく締めくくります。どちらの作品においても、この偉大なオーケストラの素晴しい演奏を体験していただけるでしょう。

 

――最後に、京都のお客さまへのメッセージをお願いします。

ネゼ=セガン:この名門オーケストラの音楽監督として、フィラデルフィア管弦楽団と京都で演奏出来ることを、大変嬉しく思っています。わたしたちは、“皆さん” のフィラデルフィア管弦楽団です。例え私たちがどこで演奏しようとも――フィラデルフィアであっても、世界中のどこかであっても、同じ旋律を演奏します。私たちがどこを旅していようと、最愛の聴衆である“皆さん”と音楽の喜びを共有するために、私たちはここにいるのです。みなさんは、私たちファミリーの一員です。美しい京都で、皆さんのクラシック音楽への深い愛情に触れることを楽しみにしています。今回の公演が、皆さんに大きな喜びをもたらしますように!

――お忙しい中誠にありがとうございました!

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★特別連載

【第1回】受け継がれる伝統とフィラデルフィア・サウンド

【第2回】アメリカ在住ライターが語るフィラデルフィア管弦楽団の現在(いま)

【第3回】フィラデルフィア・サウンドの魅力