ピアニスト エリック・ル・サージュ 特別インタビュー(2024.10.5 没後100年記念公演―― フォーレ ピアノ五重奏曲 全曲演奏会)

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京都コンサートホール

ロマン派から20世紀初頭の近代音楽への架け橋となったフランスの巨匠、ガブリエル・フォーレ。

京都コンサートホールでは、フォーレの没後100年を記念して、「フォーレ ピアノ五重奏曲 全曲演奏会」を開催いたします(10月5日)。

2022年「神に愛された作曲家 セザール・フランク」から2年ぶりに、京都コンサートホールに登場する、世界的ピアニストのエリック・ル・サージュさんにメールインタビューを行いました。

今回のインタビューでは、ル・サージュさんとフォーレの作品との出会い、今回演奏するピアノ五重奏曲第1,2番についてお話いただきました。ぜひ最後までご覧ください。

――ル・サージュさんはフォーレの録音を非常に沢山なさっていますが、フォーレに惹かれたきっかけを教えてください。

私がフォーレを好きになったのは30歳頃のことです。それまで、フォーレについてあまり良い思い出がありませんでした。というのも、11歳の時にエクサン・プロヴァンスのコンセルヴァトワールの試験でフォーレの6番のノクターンを弾いたのですが、暗譜が飛んだのです。その後、フォーレの親しみやすい室内楽作品を弾き始め、深堀りしていくことにより、だんだんと彼の音楽が好きになっていきました。

――ル・サージュさんからみて、フォーレはどんな作曲家ですか?

フォーレは一筋縄ではいかない作曲家です。
彼の初期の作品には、《ヴァイオリン・ソナタ第1番》(1875年)、《ピアノ四重奏曲第1番》(1880年)など素晴らしいコンサート用の曲があり、天才的な旋律と非常に直感的な和声法に満ちた、技巧的な作曲法が際立っています。ピアノ・ソロの曲もありますが、あまり演奏されません。なぜなら、私が11歳の時に体験した苦い思い出のように、特に暗譜することがとても難しいからです。

――フォーレの傑作の多い、中期・後期の作品についても教えていただけますか?


中期の作品にあたる《ピアノ四重奏曲第2番》などは、より複雑になった和声法、非常に高いインスピレーションを必要とする気難しい旋律、そして、後期ロマン派の精神が依然として残るドラマツルギーといったものが素晴らしく調和しています。
そしてベートーヴェンがそうであったように、フォーレは晩年において、非常に濃密な内世界に入っていきます。彼は、極限まで高められたインスピレーションをとことん突き詰めていきました。そして、どんな作曲家も真似できないような、フォーレ独自の音楽語法と調性を見出し、旋律と演奏者を高みへと押しやっていったのです。革新的なことをしたというよりは、サン=サーンスからのフランス音楽の流れを汲んで、その作風を守り続けたともいえますが、誰かの作曲技法を真似ることには興味がなかったのかもしれません。

2022年「神に愛された作曲家 セザール・フランク」公演より


――今回演奏いただく、ピアノ五重奏曲はどのような作品ですか?


2つのピアノ五重奏曲はフォーレの晩年の作品にあたります。第2番はすぐに書き上げられましたが、第1番は長い時間をかけてフォーレ自身の手で推敲され、完成しました。
この2曲は素晴らしく色彩豊かで、かつ演奏するのが難しい曲です。外面的ではなく内省的で、密度があり、明確でありながら秘められたものがあります。雄々しい音楽ではなく、演奏者は音楽に入りこむ必要があります。


――最後に、公演へ向けてメッセージをお願いします!


この作品を日本の素晴らしい若手音楽家たちと一緒に演奏できることがとても嬉しいです。彼らと一緒に、私にとってとても大切で特別なこの2曲を皆さんに知っていただくチャンスだと思っています。
京都はヨーロッパ人にとって夢のまちであり、私のお気に入りのまちでもあります。 京都で演奏できることを楽しみにしています。

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公演情報 フォーレ ピアノ五重奏曲 全曲演奏会