ヴァイオリン奏者 藤江扶紀さんインタビュー(10.22神に愛された作曲家 セザール・フランク)

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アンサンブルホールムラタ

京都コンサートホールでは、セザール・フランクの生誕200周年を記念して、特別公演「神に愛された作曲家 セザール・フランク」を10月22日(土)に開催いたします。

プログラム後半に予定している《ピアノ五重奏曲》では、フランス出身の世界的ピアニスト、エリック・ル・サージュと、国内外の第一線で活躍する日本の若手奏者たちが共演します。
今回は当日ヴァイオリンを担当する、トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団の首席奏者 藤江扶紀さんにお話を伺うことができました。
フランスでのご活動についてや、フランク《ピアノ五重奏曲》の魅力、そして今回の共演者についてなど、色々とお話いただきました。
ぜひ最後までご覧ください。

◆藤江さんについて

――この度はインタビューのお時間をありがとうございます。藤江さんは大阪出身ということですが、過去に京都市交響楽団と共演されたことがあるそうですね。

藤江扶紀さん(以下敬称略):私の先生であった工藤千博さんが、京都市交響楽団のコンサートマスターをされていたこともあり、中学校1年生の時に、京都コンサートホールで演奏しました。人生で2回目のオーケストラとの共演で、サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」を弾いた覚えがあります(2003年10月19日「こどものためのコンサート」)。

――その後、京都に来られる機会はありましたか?

藤江:そうですね、演奏会を聴きに来たり、ローム ミュージック ファンデーションの奨学生として演奏しに来たりしていました。ただ、アンサンブルホールムラタで演奏するのは今回が初めてです。

――それは楽しみですね。大学(東京藝術大学)を卒業後は、すぐにパリに留学されたのですか?

藤江:卒業直前に、「京都フランス音楽アカデミー」でオリヴィエ・シャルリエ先生に出会ったんです。先生がいらっしゃるパリ国立高等音楽院を受けるために、半年間先生のお宅や私立の音楽院でレッスンを受けながら語学を勉強した後、パリ国立高等音楽院の大学院に入学しました。
そして大学院を卒業して約半年後、2018年1月に「トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団」へ入団しました。

ちなみにオーケストラに入団するまでは、毎年「宮崎国際音楽祭」に参加していて、そこで今回共演する横島くんや上村さんと何度か一緒に弾きました。二人と共演するのはその時以来で、約5年ぶりになります。

――そうだったのですね。トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団では、“co-soliste”という肩書でいらっしゃいますよね。日本では聞き慣れない名前ですが、具体的にはどういった役割なのでしょうか?

藤江:コンサートによってポジションが変わるのですが、日本で言う「コンサートマスター」「アシスタント・コンサートマスター」(コンサートマスターの隣の席)「第2ヴァイオリンの首席奏者」「第2ヴァイオリンの副首席奏者」(首席奏者の隣の席)のいずれかを担います。なので、ほぼすべてのコンサートに出演していて、なかなか日本に帰ってこられません(笑)。
今回の公演には何が何でも出演したかったので、早めに休みを取りました!

本拠地のホールの外壁にお写真掲載中!

 

** トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団のヴァイオリン奏者の肩書について教えていただきました **
・super soliste:特別コンサートマスター
・violon solo:第一コンサートマスター
・violon chef d’attaque:第二ヴァイオリン首席奏者
・violon co-soliste:上記3つの席いずれかを担うポスト

 

――そういうことだったのですね、ありがとうございます。
フランスでは、室内楽やソロを演奏することも結構ありますか?

藤江:オーケストラのメンバーで組んでいるカルテット(弦楽四重奏)で演奏したり、ソリストとしてメンバーが指揮を振る室内オーケストラや他のオーケストラに呼んでいただいたりしています。時間があればもっとやりたいなと思っています。

オーケストラメンバーによる弦楽四重奏「Quatuor Agôn」 オーケストラとの共演コンサートの大きな看板が街中に ソリストとして演奏中のお写真
(2021年7月)

 

◆今回のコンサートについて

――では話を10月の公演に移したいと思います。今回は弓さんとつながりのあるメンバーが揃いましたよね。

藤江:はい、公演がすごく楽しみです。特に弓くんは、自分が持っていないアイデアや知識を持っていて、彼と話していると面白い発見が多いです。また、音楽に対して求めていることが似ているように感じるときがあります。
私はフランクの曲の中でも《ピアノ五重奏曲》が特に好きで、数年前に弓くんにちらっと言ったことがあるんです。弓くんはそのことを覚えていてくれていて嬉しかったです。

――そうだったんですね!ちなみにフランクの《ピアノ五重奏曲》を演奏したことはありますか?

藤江:一度だけフランスの音楽祭で弾いたことがあって、今回は久しぶりの演奏になります。この曲は私がやりたいと言っても、難曲であるためか、ピアニストに断られることが多いんですよ(笑)。

――《ピアノ五重奏曲》のどのようなところがお好きですか?

藤江:煮え切らない感じがある曲ですよね。起伏があって、濃淡があって、感情的なところもたくさんあって、でも、フランスの色彩感やフォーレのようなパステル調の音も垣間見えて…そのバランスが本当に好きなんです。年を重ねてから好きになる人が多い曲だと思うのですが、私は初めて聞いた時から好きでした。
すっきりするわけではないけれど、気持ちに寄り添って、色んな感情を整理してくれるんです。フランクは真面目な性格で、外に出せない内に秘めた感情を表現したのではないかなと思います。
そして何と言いますか、救われない感じに救われます。ハマる人にはハマるという曲だと思うので、この沼に皆さんを引きずり込みたいです(笑)。

――今回共演されるメンバーについて、また公演の聴きどころを教えてください。

藤江:ル・サージュさんはお会いしたことはありませんが、パリで2回ほど演奏会に行ったことがあります。もともとル・サージュさんのフランクやフォーレの「ピアノ五重奏曲」をCDやYouTubeでよく聞いていて、まさか一緒に演奏できるとは思いもしませんでした。
そして弦楽器のメンバーは、この4人で一緒に弾くのは初めてですが、今までで知っている彼らのパーソナリティから想像すると、人間的にも、音楽の面でも絶対に楽しいものになると思います。それぞれの考え方を持ち寄ったときに、どういう音楽が生まれるのかをぜひ期待していただきたいです。

――いろんなお話を聴かせてくださり、ありがとうございました。また10月にお待ちにしております!

(2022年8月京都市内某所 事業企画課インタビュー)


★出演者インタビュー
ピアニスト エリック・ル・サージュ氏 特別インタビュー
横島礼理さん(ヴィオラ)&上村文乃さん(チェロ)インタビュー

★「神に愛された作曲家 セザール・フランク——フランク生誕200周年記念公演——」の公演情報はこちら