ピアニスト エリック・ル・サージュ氏 特別インタビュー(2022.10.22神に愛された作曲家 セザール・フランク)

投稿日:
京都コンサートホール
19世紀に活躍したベルギー出身の音楽家セザール・フランク (1822-1890)。
京都コンサートホールでは、フランクの生誕200周年を記念して、特別公演「神に愛された作曲家 セザール・フランク」を開催いたします。本公演ではフランクが遺したピアノと室内楽のための傑作をお届けします。
 
出演者のピアニスト、エリック・ル・サージュさんに、フランクの魅力や本公演の聞きどころについてインタビューすることができました。ぜひ最後までご覧ください。

 

 

――この度はインタビューのお時間をいただき、ありがとうございます。
京都コンサートホールには、2019年5月のリサイタル以来、3年ぶりの登場となります。京都コンサートホールにどのような印象を抱かれましたか?

エリック・ル・サージュさん(以下敬称略):2019年に私が演奏したのはアンサンブルホールムラタでしたが、ピアノや室内楽にとって恵まれた音響を持つホールで、とても自然な響きだったことを覚えています。

 

――今回ご出演いただくのは、セザール・フランクの生誕200周年を記念した特別公演です。ル・サージュさんが思うフランクの魅力を教えてください。

ル・サージュ:フランクの作品を演奏するのは大好きです。彼の曲には音域の広い和音がたくさん出てくるのですが、私の手は大きいですから、演奏するのにぴったりなのです。
フランクの音楽を一言で言うと「独特で表現力豊か」。荘厳な和音やたっぷりとした息の長いフレーズ、そして深慮に満ちた色彩感が特徴です。
また、フランク作品の大きな特徴の一つとも言えるのが、循環形式(同じテーマを別の楽章で繰り返し使う技法)ですね。同じフレーズを同じ曲の中で何度も使うのですが、そのたびに様々な方法で変奏しながら旋律を引き立たたせ、聴き手を惹きつけます。
特に今回演奏する《ピアノ五重奏曲》では、そのような技法がたくさん出てきます。まるで、物語がどんどん展開していくアクション映画やサスペンス映画を観ているようですよ。
フランクの音楽が時代を超えて人々に愛されている理由は、きっとこのようなところではないでしょうか。

 

――今回は室内楽作品だけでなくピアノ独奏曲もご披露いただきます。フランクのピアノ作品はどのような特徴がみられますか。

ル・サージュ:フランクのピアノ音楽はとても内向的です。対位法が使われていたり、オルガン作品で使われるような書法がピアノでも使われていたり、フランクならではの特徴がたくさん出てきます。
また、彼はベルギー出身ということもあり、フランスとドイツの要素がバランスよく取り入れられていることも特徴的ですね。

今回は《前奏曲、フーガと変奏曲》から〈前奏曲〉を抜粋して演奏します。
今シーズン、オリヴィエ・ラトリー(フランスのオルガン奏者)が演奏するオルガンやハーモニウムと一緒に、この曲を何度か演奏しましたが、思慮深く、レトリックに満ちた非常に美しい作品だなと思います。

またこの〈前奏曲〉を含めた、20世紀初頭のフランスの作曲家たち24人の小品を集めたアルバムを今秋にリリースする予定です。

――日本では他の作曲家と比べるとフランクはあまり知られていませんが、フランスではどうでしょうか。

ル・サージュ:フランスでも状況はあまり変わりませんよ。「ヴァイオリン・ソナタ」や「交響曲」「ピアノ五重奏曲」「前奏曲、フーガと変奏曲」といった有名な作品しか演奏されていません。いずれも傑作だから、何度も繰り返し演奏されるのです。他にも美しい曲はありますが、傑作とまではいえないので、あまり演奏されないのだと思います。

 

――フランスも似たような状況なのですね。ちなみにフランクの生誕200周年を記念したイベントは、フランスで行われていますか?

ル・サージュ:具体的に「フランク・フェスティバル」といったものはないと思いますが、演奏される機会は例年よりも確実に増えていると思います。私も先月(6月)、《ヴァイオリン・ソナタ》と《ピアノ五重奏曲》を2回演奏しました。

 

――ル・サージュさんにとってフランクはどのような存在でしょうか。

ル・サージュ:フランクの作品を勉強したことで、フォーレやシューマンの作品を弾く際の参考になり、レパートリーの幅が広がりました。
また、フランクの《ヴァイオリン・ソナタ》は、おそらく私が初めて勉強した室内楽の大作で、パリ音楽院の室内楽クラスにいた15歳の時に弾きました。
私の音楽院時代の先生であるピアニスト ジャン・ユボー先生による赤字と青字の注意書きがたくさん書かれた楽譜を今でも持っています。その楽譜がボロボロになってきたので、大好きな日本の“金継ぎ”のやり方で、修復してみたいと思っています。

――今回の演奏会ではフランクの3曲に加え、フォーレの夜想曲を選曲されましたが、なぜフォーレを選ばれたのですか。

ル・サージュ:フォーレはフランクの対位法に影響を受けています。フランクに対する「オマージュ」ということで、フォーレの作品を選びました。
また、《ヴァイオリン・ソナタ》と《ピアノ五重奏曲》という動きのある大曲に対してバランスを取るため、静かで短めの作品である、フォーレの《夜想曲》2曲とフランクの〈前奏曲〉を選びました。

 

――では最後に公演を楽しみにしてくださっているお客さまへメッセージをお願いいたします。

 

――お忙しい中インタビューにお答えいただき、ありがとうございました。10月の公演を今からとても楽しみに京都でお待ちしております。

(2022年6月都内某所 事業企画課インタビュー)

 

★「神に愛された作曲家 セザール・フランク——フランク生誕200周年記念公演——」の公演情報はこちら