2024年3月9日開催の「The Real Chopin × 18世紀オーケストラ 京都公演」では、2つのショパン国際コンクール優勝者をソリストに迎え、ショパンのピアノ協奏曲全2曲などをお届けします。《ピアノ協奏曲第2番》を演奏するトマシュ・リッテル氏は、「第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクール」の本選で18世紀オーケストラと共演し、同曲を披露して見事優勝しました。
当公演に向けて、ピアニストで音楽ライターの長井進之介さんが行ったリッテル氏へのインタビューをお届けします。18世紀オーケストラや演奏する《ピアノ協奏曲第2番》、そしてショパンをピリオド楽器(作品が書かれた当時の楽器)で演奏する意義について語ってくださいました。ぜひ最後までご覧ください。
2024年3月、18世紀オーケストラと共に「The Real Chopin」と題したコンサートツアーを行うトマシュ・リッテル。第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクールで第1位となった彼は、ピリオド楽器の音色を最大限に活かしながら、溢れる歌心とドラマティックな表現で魅せてくれるピアニストだ。そんな彼に、今回のコンサートに向けての意気込みを伺った。
「ご一緒させて頂く18世紀オーケストラは、伝説的なリコーダー奏者であるフランス・ブリュッヘンが結成したオーケストラであり、ピリオド楽器への熱い想いを持ったスペシャリストたちが集っています。コンクールの時にも共演させて頂きましたが、とても互いを尊重し合って演奏ができたことが印象に残っています。彼らの音色や柔軟な反応は本当に素晴らしいので、今回の共演もとても楽しみです」
今回リッテルがソリストを務めるのはショパンのピアノ協奏曲第2番。若きショパンならではの華麗なテクニックと繊細な詩情が込められ、オーケストラとの緻密なやり取りも特徴的な作品だ。
「ショパンの作品をよく見ていくと、モーツァルトの影響を強く受けていると感じます。特に初期の楽曲はそれが顕著で、演奏の難しさにもつながっているところです。古典的なスタイルとロマンティックな音楽運びのバランスをうまくとっていかなくてはなりません。オーケストラとの共演においても、輝かしさと共に軽さ、やわらかさのある音色を作り出しながら対話をしていく必要があると思います」
さらに第2番とどのように対峙していくかについても語ってくれた。
「音楽というのはその時の経験などが大きく影響していくものだと思いますが、ピアノ協奏曲第2番は、特に初恋などショパンの内面と深く結びついたナイーヴな作品ですね。同時に、彼が愛したポーランドの民族色も強く表れています。これは特に第3楽章に見られるものです。かなり素直に彼の想いが反映された作品ですから、あまり作り込み過ぎず、正面から向き合って演奏していければと思っています」
今回のコンサートはショパンの時代のピアノである1843年製プレイエルが使用され、まさに「真実のショパン」に出会う絶好の機会だ。最後に、ピリオド楽器を使ってショパンを演奏するという事について、リッテルの考えを尋ねた。
「ショパン自身が即興を得意とし、様々な演奏法を探求していた人なので、一つの答えがあるわけではありません。ですから私はどのような方向から即興ができるか、ということを常に試しています。自由であり、あらゆる可能性が開かれていることこそがピリオド楽器演奏の醍醐味だと思うのです。そもそもショパンが生きていた時代、彼の音楽はいわゆる“現代音楽”でしたから、聴衆は常に新しいものに出会い驚いていたはず。私も皆さんに何か新鮮なものをお届けできるように演奏をしていきたいですね。京都コンサートホールの素晴らしい響きの中で、最高のオーケストラと共に演奏できることが今からとても楽しみです」
【取材・文】長井進之介(ピアニスト・音楽ライター)
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