秋山和慶 特別インタビュー(2022.09.19 第11回 関西の音楽大学オーケストラ・フェスティバル) 

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京都コンサートホール

2011年にスタートした「関西の音楽大学オーケストラ・フェスティバル IN 京都コンサートホール」。今年で11回目を迎えます。そのほとんどの公演で指揮いただいている秋山和慶さんにインタビューを行いました。

――秋山先生にはこれまで、本フェスティバルの11回開催のうち、第5回をのぞく計10回にご出演いただきました。特に印象に残っている演奏会(プログラム)はありますか。

(オンラインインタビューより)

秋山和慶さん(以下敬称略):これまで学生たちが真剣に取り組んでくれたので全て印象に残っています。特に大編成の曲は、普段それぞれの学校だけでは人数が足りず演奏ができなかったり、楽器によっては技術的に難しすぎるので、学生たちはみんなで演奏できたことを本当に喜んでくれました。演奏会が終わったときに、上手くいって涙している子どもたちを見ると、「やっていて良かったな」と毎回思います。

――やはりすべての公演がそれぞれ印象に残っていらっしゃるのですね。この公演では、関西の8つの大学から集まる合同オーケストラを束ねてくださっています。合同オーケストラならではの苦労した点をお聞かせいただけますか。

秋山:8つの大学が集まるとなると、それぞれ授業の時間が違ったり、集中講義があったりして、学生全員が練習になかなか揃わないのが一番ネックでした。また、台風などの天候が支障をきたしたこともありましたね。京都で練習と本番を行いますが、大阪・兵庫など遠くから参加している学生もいますから、学生がきちんと家まで帰れるか心配でした。

――そんな練習の苦労も乗り越え、この合同オーケストラでしか味わえない醍醐味もありますよね。

秋山:普段一緒に演奏することのない他大学のメンバー同士が、気持ちをそろえて一緒に演奏するためには、個人的な好き嫌い(気が合う合わないなど)を乗り越えて音楽に対峙しないといけません。今後、プロの世界に進む人や、多種多様な人たちと舞台を作っていくであろう彼らが、「一緒にひとつのものを作り上げる作業」を経験できるという意味で、とても意義のある公演だといつも感じています。

第10回公演より

――参加する学生達も、とても良い経験ができていると思います。
そんな中、2年前に起きたコロナのパンデミックにより、それまでとは本当にいろいろな事が変わってしまいました。秋山先生ご自身は、コロナの前後で、学生に対する教え方について変化はありましたか。

秋山:教え方に変化はありませんが、これまでほとんどなかった「オンラインで教える」機会が増えました。オンラインは確かに便利なのですが、機器を通して聴く音は実際の生の音とは違うため、指導の仕方が難しいですね。実際指導を受ける側の学生たちも同じように感じているようです。分奏もやってみましたが、電気的な時差が生じて、指揮者に合わせるのはほとんど不可能でした(苦笑)。

――これまでとは違ったご苦労もあるでしょうね。
さて、ちょうど2年前、ベートーヴェンの生誕250年と公演開催から10年を迎えたこともあり、ベートーヴェンの交響曲第九番を取り上げる予定でしたが、コロナによって、公演が中止になってしまいました。昨年は、まだ合唱曲を取り上げるのが難しかったため、第九ではなくオーケストラ曲2曲をプログラミングし、なんとか開催に至りました。実際に開催できた時のお気持ちをお聞かせいただけますでしょうか。

秋山:中止は仕方がありませんでしたが、大事な10回という記念の回に合唱が演奏できないばかりか、公演自体を中止せざるをえなかったというのは非常に残念でした。翌年は、合唱がなく、かつ大編成ではない曲の中から選曲し、感染症対策を講じながらの練習は大変でしたが、無事実施ができて本当によかったです。

第10回公演より

――今年のプログラムも、昨年に引き続きオーケストラのためのクラシック音楽の王道と言える名作2曲(ベートーヴェン:交響曲第5番、チャイコフスキー:交響曲第5番)を取り上げますが、演奏を通して、秋山先生が今音楽を学ぶ学生たちにあらためて伝えたい事を教えていただけますか。

(オンラインインタビューより)

秋山:学生たちに技術的な面できちんと勉強できるチャンスを作ってあげられたらという意図で、実行委員会の皆さんと一緒に選んだ2曲です。学生たちにとって聴き慣れた、馴染みのある曲でもあります。特に、ベートーヴェンの交響曲はオーケストラ奏者にとっては基本中の基本の曲です。一方のチャイコフスキーの交響曲は、思い切り活発に演奏できる曲ですし、ロマンティックなロシア流の表情のつけ方も学んでほしいですね。限られた練習時間で、周りのメンバーに合わせて演奏するという大切なところをこの機会に経験してほしいと思います。

――今から公演が楽しみです。コンサートにお越しになるお客様にメッセージをお願いします。

秋山:若々しいエネルギーをつぎ込んで、真剣に、音楽を大事にしっかりと表現しようとしている姿勢を見て、聴いていただきたいです。ベートーヴェンでは彼らしい力強さを感じられるでしょうし、チャイコフスキーでは、きれいなメロディーがたくさん出てくるので、音楽の流れに身を浸してリラックスして楽しんでください。

――それでは最後に参加する学生たちにもメッセージをお願いいたします。

秋山:音楽をやっていてよかったと思える瞬間がきっとあるはずです。音楽で辛いことや悲しいことを乗り越えられるかもしれないし、いい音楽をみんなと一緒に作れたときの喜びは何にも代えがたいものがあると思います。音楽そのものに奉仕する経験をしてみるのも大事かもしれませんね。

――お忙しい中、インタビューにお答えいただきありがとうございました。演奏会を楽しみにしております!

公演は2022年9月19日(月・祝)京都コンサートホール 大ホールで15時開演です。
公演情報