2023年10月21日(土)午後3時開演「プーランクの横顔」(京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ)に出演する、ピアニストのパスカル・ロジェ氏。
コンサート開催に向けて、特別にメッセージ動画を寄せてくださいました。
今回のコンサートのテーマである「フランシス・プーランク」について、様々な秘話を交えながら、とっても素敵なお話をご披露くださっています。
ちなみにパスカル・ロジェ氏は、大のプーランク好き。1999年にプーランクのピアノ作品全集をリリースしており、今日にいたるまで、プーランクのピアノ作品録音の決定盤として世界中で愛聴されています。
<メッセージ動画 日本語訳>
みなさん、こんにちは。プーランクについてお話することができて、とても幸せです。
というのも、プーランクは私にとって非常に特別な作曲家であり、特別に好きな作曲家だからです。
わたしはプーランクのピアノ作品はもちろん、歌曲、室内楽、コンチェルトといった、彼のピアノが入る全作品を録音しました。この録音作業を通して私は彼の世界をとことん探求しました。私にとって、いつもとても個性的で、とてもフランス的なプーランクの音楽を演奏することは素晴らしい経験です。
なぜ、わたしはプーランクがこんなに好きなのか?個人的なエピソードがあります。本当かどうかわかりませんが、とても気に入っているエピソードです。
私の母が私を妊娠している時、プーランクの協奏曲を勉強していました。彼女はオルガニストだったので、オルガンとオーケストラの協奏曲を演奏することになっていたのです。
彼女は妊娠している間、この作品を練習していたので、私は母のお腹の中でこの曲をずっと聴いていたでしょうし、どこかで私の体にその音楽が刻み込まれたと、必然的にいつも思っていました。その5,6年後、母はもう一度この協奏曲を演奏する機会があったのですが、その時、すでにわたしは譜めくりもできましたし、楽譜を読むこともできました。そして、とてもよく覚えているのですが、この時、私は初めて音楽を聴いて、心から感動したのです。
これは、私が何年か前に聴いた音楽だと認識していたからだったのでしょうか?
そうですね、その可能性はあるでしょう。このエピソードは私にとって、プーランクに対する非常に特別な愛情の解釈になっています。
プーランクの音楽は非常に特別です。プーランクはドビュッシーのように革新者ではありませんでしたし、改革者でもありませんでした。でも、非常に独創的な音楽を書く音楽家でした。あるフランスの批評家は、プーランクの音楽は多くの作曲家の音楽が混ざり合ってできたようなもの、と言いました。でも、彼の音楽は誰の音楽でもないんです。つまり、彼は特に独創的な和声を使ったわけではないのですが、プーランクならではの方法で作曲していたのです。そして、私たちは、それがプーランクだとすぐに分かるのです。これは、非常に強力な個性の現れです。
ピアノは、いつもプーランクのお気に入りの楽器でした。彼はピアニストでした。だから、彼の作品の4分の3がピアノ作品なんです。
室内楽作品もまた、プーランクにとって非常に重要なジャンルでした。
プーランクは、木管楽器を特別に愛していました。プーランクは、オーボエ、クラリネット、フルートのために素晴らしいソナタを書きました。 今回の演奏会では、クラリネットとフルートのために書かれた2曲のソナタを演奏します。それらの作品を、若い日本の音楽家たちと共演できることがとても幸せです。彼らがどのようにプーランクの音楽を受け止めるのか、どうやって演奏するのか、どうやって解釈し、どうやってプーランクの音楽に対する愛情を観客と共有することができるのか、楽しみです。
プーランクの音楽は私たちを幸せにしてくれますし、優しく、またユーモアのあるプーランクの音楽を聴いていると心地よい気分になります。だから、お客様は、プーランクの音楽を聴くと幸せな気持ちになるに違いありません。プログラムも多彩ですしね。
今回演奏するプログラムは、ピアノ独奏曲とフルートやクラリネットのためのソナタ、そして木管五重奏とピアノのための六重奏曲です。この六重奏曲は本当に、本当に素晴らしい作品です。だから、私は、このプログラムをプーランク没後60年の年に演奏できることがとても嬉しいのです。彼は、1963年に亡くなりました。当時、プーランクの死を理解するには、私は若すぎました。しかし、私の母はプーランクと知り合いでした。プーランクの協奏曲を演奏した際、その場に彼はいなかったのですが、その演奏がラジオ放送された時、プーランクはそれを聴いたのです。
プーランクは感謝の気持ちを母に伝えるために、賛辞の言葉が書かれたメッセージカードを贈ってくれました。そして私の母は、私が20歳の誕生日に、そのカードを私にプレゼントしてくれたのです。
今回、プーランクのコンサートを開催することができて、本当に感動しています。プーランクは私にとって、非常に特別な作曲家です。プーランクの音楽を聴いたお客様は、きっと沢山の幸せと喜びを感じてくださることと思います。
◆公演情報◆
プーランク没後60年
パスカル・ロジェ×ウインドクインテット・ソノリテ
「プーランクの横顔」
2023年10月21日(土)15時開演
京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ
出演:パスカル・ロジェ(ピアノ)、ウインドクインテット・ソノリテ(上野博昭[フルート]・須貝絵里[オーボエ]・田悠斗[クラリネット]・村中宏[ファゴット]・深江和音[ホルン])
プログラム:<オール・プーランク・プログラム>
クラリネット・ソナタ、3つのノヴェレッテ、3つの無窮動、《3つの間奏曲》より第2番 変ニ長調、《15の即興曲》より第13番・第15番・第6番、フルート・ソナタ、六重奏曲
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