ピアニスト ゲルハルト・オピッツ 特別インタビュー(2021.11.13オピッツ・プレイズ・ブラームス~withクァルテット澪標~)

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京都コンサートホール

京都コンサートホールの特別シリーズ『The Power of Music~いまこそ、音楽の力を~』の第3弾「オピッツ・プレイズ・ブラームス~withクァルテット澪標~」(11/13)では、ドイツ・ピアニズムを受け継ぐ巨匠ピアニストのゲルハルト・オピッツ氏が、オール・ブラームス・プログラムを披露します。

オピッツ氏は、2020年に開催した特別シリーズ「ベートーヴェンの知られざる世界」にご出演いただく予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響で出演は叶いませんでした。

今回、待望の京都公演に向けて、オピッツ氏へメールインタビューを行いました。
演奏していただくブラームスの作品や、特別な憧れがあるという京都についてお聞きしました。ぜひ最後までご覧ください。

(C)Concerto Winderstein

——この度はインタビューをお引き受けいただき、ありがとうございます。
昨年はご出演がかなわず大変残念でしたが、
今回改めてオピッツさんをお迎えできますこと、心より嬉しく思います。
さて、オピッツさんはこれまで日本各地で演奏されていらっしゃいますが、京都コンサートホールは3回目のご出演になるかと思います。1回目は2002年にヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮のNHK交響楽団と、2回目は2019年のマルク・アンドレーエ指揮の京都市交響楽団との共演でした。
京都コンサートホールの印象や過去の2回の演奏会での印象的なエピソードがあれば教えてください。

オピッツ氏:京都コンサートホールは、聴衆だけでなく演奏する側にとっても理想的なホールだと思います。ホールの持つ建築のコンセプトと優れた音響のおかげで、この場所で演奏することが本当に楽しいのです。
以前ベートーヴェンの協奏曲第3番とブラームスの協奏曲第1番を演奏しましたが、どちらも素晴らしい思い出です。ヴォルフガング・サヴァリッシュとマルク・アンドレーエという二人の偉大な指揮者とは80年代からのよき仲間、よき友人であり、私たちは何十年も多くの舞台を共にし、信頼し合うことができました。幸いなことにアンドレーエ氏は今も健在で音楽仲間や聴衆を魅了し続けていますが、サヴァリッシュ氏はもうここにはいません。本当に残念でなりません。

2019年1月 マルク・アンドレーエ指揮、京都市交響楽団との共演の様子(C)京都市交響楽団

★2019年のアンドレーエ氏&京都市交響楽団との共演の様子はこちら↓
京都市交響楽団 公式ブログ「公演終了!アンドレーエ&オピッツ「第630回定期演奏会」」

 

——今回の演奏会では、オール・ブラームス・プログラムを演奏していただきます。プログラム前半では、ブラームスの作曲人生において実り多き時期から晩年にかけてのソロ作品を選んでいただきました。選曲の意図と各曲の魅力を教えていただけますでしょうか。

オピッツ氏:1864年にブラームスが作曲した作品34の五重奏曲は若かりし頃のスタイルを踏襲しており、四楽章構成という大規模な作品です。これに呼応するものとして、ピアノの小品に集中して作曲を行った後期の成熟した作品を選びました。
2つのラプソディーは、古典的形式とラプソディーの自由さが統合された作品です。
続いて、ブラームスが“Klavierstücke”(ピアノ小品)と呼んだ最晩年の小品集の持つ魔法のような世界観へと歩みを進め(作品119)、“Fantasien”(幻想曲)と名付けた作品を演奏します(作品116)。
これらの作品の中にはドラマチックで煽情的なものもありますが、そのほとんどは熟考され詩的な美しさが強調された作品です。これこそがブラームスの絶頂期だと思います。

(C)HT/PCM

——後半プログラムの「ピアノ五重奏曲」では、京都ゆかりの若手音楽家による「クァルテット澪標」と共演なさいます。クァルテットのメンバーは現在それぞれ、ドイツ・ベルギー・イギリス・日本で活躍しています。共演する上で楽しみにされていることなどがありましたら教えてください。

オピッツ氏:クァルテット澪標の素晴らしい皆さまと、壮大な五重奏曲作品34で共演できることを楽しみにしています。彼らの演奏への熱烈な評判を耳にし、今回初めてご一緒できることになり、大変嬉しく思います。
この五重奏曲は室内楽曲の中でも特に重要な作品ですし、この曲を演奏することは5人の演奏家同士での知的で深い会話のように思っています。私たち5人は、ともに楽しい演奏を究極の目標として、この素晴らしい作品の魅力を聴衆の皆さまにお届けします。

クァルテット澪標

——オピッツさんは親日家でいらっしゃって、あるインタビュー記事で「とりわけ京都にはある種の憧れを感じています」と話されているのを目にしました。よろしければそのお話を聞かせていただけますでしょうか。

オピッツ氏:私にとっての京都は、日本だけでなく世界中のどの都市と比べても唯一無二の都市です。初めて訪れた1976年以来、いつもその街並みの美しさに感動し、魅了されています。一方に町があり、もう一方に広がるお寺や神社などの歴史的な風景、そして山や森、川などが驚くほど見事に調和しており、まるで完全な芸術作品のようです。千年以上の歴史に根差した伝統の美しさが、現代の生活に見事に溶け込んでいます。

 

——さて、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックは、世界を大きく変化させました。今回のコンサートを含む4つのコンサートシリーズ「The Power of Music~いまこそ、音楽の力~」は、「コロナに屈せず、“音楽の力”を信じて前に進もう」という思いで企画いたしました。「音楽の力」は、ウィズコロナそしてアフターコロナの状況で、どのような役割を果たす(果たしている)とオピッツさんは思いますか。

オピッツ氏:現在のパンデミックの状況によって、私たちが以前のように生活を楽しむことが難しくなっています。音楽はウイルスの脅威による影響や、それに付随する問題を解決することはできませんが、私たちの魂を勇気づけてくれるものです。辛い状況にある私たちの感情や思考を和らげてくれるもの、それが音楽だと思います。

(C)HT/PCM

——最後に、1年越しの演奏会を楽しみにしている皆さまへメッセージをお願いいたします。

オピッツ氏:クァルテット澪標と私は、ヨハネス・ブラームスの芸術的なメッセージに対する私たちの情熱を皆さまにお届けしたいと思います。ブラームスのファンが増えることを願っていますし、音楽愛好家の皆さまにもブラームスの新たな一面を見つけていただけたら幸いです。彼の精神が私たちを啓蒙し、導いてくれますように。

——お忙しい中ありがとうございました。京都でお会いできますことを楽しみにしております。

(2021年10月事業企画課メール・インタビュー)

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