10月5日開催!京都コンサートホール✕ニュイ・ブランシュKYOTO2019

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インタビュー

“ニュイ・ブランシュ(白夜祭)”とは、パリ市が毎秋行う一夜限りの現代アートの祭典。
今年も市内各所で、“ニュイ・ブランシュKYOTO”が盛大に開催されます。
毎年設定されるテーマに沿って現代アートが繰り広げられるのですが、今年のテーマは「Dialogue」。フランス語で「対話」を意味します。
京都コンサートホールでは、今となっては貴重な存在となった「ミニ・ピアノ」2台を使って、様々な「ディアローグ」を表現します。

9月某日、出演者のお二人、ピアニストの砂原悟さん・田中咲絵さんによるリハーサルが京都市立芸術大学で実施されると聞き、練習風景を覗きに行きました。

初めて目にするミニ・ピアノは想像以上に小さく、どこか懐かしい音色を持つ楽器でした。例えるなら、むかし幼い頃に訪れた異国で聴いたことがあるような、ないような――ミニ・ピアノの音はそんな不思議な魅力を放っていました。

ミニ・ピアノ

「ミニ・ピアノ」とは、現代ピアノよりも小さなサイズのアップライト・ピアノのことで、戦後の物資が揃わなかった時代に、当時の河合楽器が楽器製作への情熱を注ぎ込んで出来上がった楽器です。
現在「ミニ・ピアノ」を見かける機会は滅多にありませんが、そのような激動の時代に生み出され、生き抜いた楽器であると知り、小さい楽器ながらその存在感に圧倒されてしまいました。

ニュイ・ブランシュ当日に演奏されるプログラムには、さまざまな国・時代・スタイルの作品が並びます。

ラヴェル:《クープランの墓》より第2番〈フーガ〉
ドビュッシー:《6つの古代のエピグラフ》より第1, 4, 5, 6番
マショー:《ノートルダム・ミサ》より〈キリエ〉
リュリ:オペラ《アルミード》より〈パッサカーユ〉
ライヒ:《ピアノ・フェイズ》
藤枝守:《植物文様クラヴィーア曲集》第13集より D, B  第28集よりD

この日のリハーサルでは、マショーの《ノートルダム・ミサ》より〈キリエ〉や、リュリの《アルミード》より〈パッサカーユ〉、ライヒの《ピアノ・フェイズ》などが演奏されました。

マショーとミニ・ピアノ

いずれの曲もまるでミニ・ピアノのために書かれた作品かのように美しく響き、思わずその世界観に引き込まれてしまいました。そこで砂原さんに、今回のプログラムはどのように選曲されたのか、尋ねてみました。

「ミニ・ピアノが2台並ぶ機会なんて、そうそうないですよね。
だから、2台で演奏したときに綺麗に響く曲、響きがぴったり合う曲を選びたかったんです。そこでぱっと思いついたのが、ドビュッシーの《エピグラフ》。
弾いてみたらやっぱり良かった。いい感じで響いてくれました。

藤枝さんの《植物文様クラヴィーア曲集》(※植物研究家でありメディアアーティストの銅金裕司が考案した「プラントロン」という装置との出会いから生まれた曲集。装置から採取された植物の葉表面の電位変化のデータに内包された音楽的な価値に着目しながら、コンピュータ・プログラムによって、この電位変化のデータをメロディックなパターンに読みかえるという手法が一貫して行われ、作曲されている)はいつも僕はソロで弾いているんですけど、最近になって台湾のお茶のデータで作られた曲集が出版されました。その曲集に収録されている作品は、これまで出版された作品よりも音の数が多いのです。もちろん1台でも演奏出来るんですけど、同じ音が重複している箇所がある。
例えばソプラノもアルトも同じ音で演奏する箇所がありますが、それを1台で演奏すると、ただの1音になってしまう。ただ、2台で弾くとその同じ音がちゃんと2声になるのです。
そういうところが2台のピアノで演奏すると良いんじゃないかなって思いました。

あとはやっぱり、音域かな。現代のピアノよりも狭いので、そういう音域のものをプログラムに並べてみました。

藤枝守:植物文様クラヴィーア曲集第28集より Dパターン

ライヒの《ピアノ・フェイズ》に関しては、最初に2台のミニ・ピアノが12音の音列を演奏しますが、少しずつこの音列がずれていきます。色合いが少しずつ変化していくような音やリズムの移り変わりに注目して聴いていただきたいです」。

ライヒ《ピアノ・フェイズ》から 基本となる12音の音列

また、共演者の田中さんは、この演奏会の反響の大きさを教えてくださいました。

「チラシや情報を見た人から“見たよ!すごく面白そう”とたくさん反響をいただいています。このコンサートに対しての皆さんの興味の示し方が、いつも私たちが出演しているようなピアノの演奏会に対しての反応とは全く違うんですよね。“ミニ・ピアノっていう楽器があるんだ~!どんな音が鳴るの?”って、楽器自体に興味を持ってくださっている方が多いみたいです。
ピアノ以外の楽器の人たちや、音楽以外の分野が専門の方からも“見てみたい”という声をたくさん頂いたことも印象的でした。興味を持ってくださった方たちに、良い演奏をお届けできたら良いなと思います」。

砂原さんも次のように語ってくださいました。

「ミニ・ピアノみたいなものって、たぶんご存知ない人が多いでしょう。ミニ・ピアノの音を聞いてみて、新しい体験をしていただけると思う。
今まで聞いたことのない音を聞かれると思いますので、どういう反応がかえってくるのかこちらは楽しみですね」。

京都コンサートホール✕ニュイ・ブランシュKYOTO2019「ディアローグ――ミニ・ピアノが投影する“対話”」は、10月5日(土)20時開演、入場無料です。
京都コンサートホールにとっても貴重なコンサートになると思われるミニ・ピアノによる公演をどうぞお見逃しなく。
Nuit Blanche Kyoto 2019 公式ページ

(2019年9月12日、京都コンサートホール事業企画課インタビュー@京都市立芸術大学)