【フィラデルフィア管弦楽団 特別連載⑤】ピアニスト ハオチェン・チャン特別メールインタビュー

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インタビュー

アメリカ“ビッグ5”の一つである「フィラデルフィア管弦楽団」の魅力を様々な視点からお伝えする「特別連載」。

第5回は、11月3日の京都公演でラフマニノフ《ピアノ協奏曲第2番》を演奏するピアニストのハオチェン・チャン氏へのメールインタビューの模様をお届けします。チャン氏自身のことをはじめ、直近のフィラデルフィア管弦楽団との共演や、今回のプログラムについてなど色々とお聞きしました。

――インタビューを引き受けてくださり、ありがとうございます。
11月3日の京都公演で共演するマエストロ・ネゼ=セガンとフィラデルフィア管弦楽団(以下「フィラデルフィア管」)とは、今年5月の中国ツアーで共演されましたね。どのような演奏会でしたか?

ハオチェン・チャン氏:コンサートは素晴らしい出来でした。私たちはラフマニノフの《パガニーニの主題による狂詩曲》をしたんですけど、フィラデルフィア管ってラフマニノフのお気に入りのオーケストラだったんですよ。ラフマニノフは、フィラデルフィア管が長年培ってきたロマンティックな音色と音楽作りが好きだったようです。それは今のフィラデルフィア管にも引き継がれています。
ですので、《パガニーニの主題による狂詩曲》をフィラデルフィア管とマエストロ・ネゼ=セガンと演奏できたことは、本当に感動的な経験でした。

 

――今回のプログラム、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番は、これまで何度も演奏されていると思いますが、ピアニストとして感じるこの曲の魅力を教えてください。

チャン氏:私にとって、この作品の最大の魅力は、ラフマニノフの精神や彼の音楽観が最もよく表現されている点にあると思います。つまり、ラフマニノフの表現力の深さや彼が追い求めようとする豊かで色鮮やかな和声です。ラフマニノフは本当に独創的天才です。彼の音楽には、不自然なことや取ってひっつけたような箇所が全くないのです。

 

――ハオチェン・チャンさんはフィラデルフィアにあるカーティス音楽院で学ばれたので、フィラデルフィアという土地は非常に思い入れのある場所かと思います。音楽的側面から見てフィラデルフィアはどういう魅力を持つ街でしょうか。

チャン氏:「フィラデルフィア」という街は、カーティス音楽院で学んだ私にとって切っても切り離せない存在ですし、私の人生において非常に印象深い街です。また「カーティス」という町は、私が聴いて育ったフィラデルフィア管の本拠地で、最高峰の室内楽シリーズが開催されていたり、美術館が多くあります。これらの芸術的側面を脇に置いたとしても、「フィラデルフィア」はユニークな都市です。その理由は、大都市のキャパシティを持ちながら、小さな町にあるような親密さも兼ね備えているからで、私にとって理想的な組み合わせです。

(c) B Ealovega

――音楽以外では絵や詩を書くことがお好きだと、あるインタビュー記事で見ました。どういった絵や詩を書くことが多いですか。また普段の演奏につながるところはありますか。

チャン氏:明確なスタイルを持っているわけではありませんが、純粋に自分の喜びのために、余暇を楽しむだけの“ただの”アマチュアです。技法的には、コンテンポラリーのスタイルだと思います。ただ“コンテンポラリー(現代的)”というカテゴリーは、いつが“現代”かとても曖昧なんですけどね…。
絵や詩を書くことで明確なアイディアを得られるとは思っていませんが、私の芸術的視点を豊かにしてくれます。また、きっと書かなければ見過ごしてしまうような音楽の細部に対して、自分の感性をこれまで以上に少し鋭く敏感にしてくれていると思います。

 

――来年で30歳を迎えられると思いますが、30歳になったら何か挑戦しようと思うことはありますか。

チャン氏:「挑戦」って何か特別なことであるべきではない、と私は思っています。芸術って、つまりは“成長すること”ですよね。だから私たちは常にチャレンジすることをやめないのです。例えば、私は今シーズン、いろんな場所で違うオーケストラと2公演形式でベートーヴェンの5つのピアノ協奏曲全曲を演奏します。でも、私が30歳になる時に特別なことにチャレンジしているかどうかは、今の私には分かりません。

 

――最後に、京都のお客様へのメッセージをお願いします。

チャン氏:フィラデルフィア管とマエストロ・ネゼ=セガン、そして私が皆さまへお届けする刺激的なプログラムをお楽しみいただけましたらと思います。また、過去にリサイタル(※2011/10/11と2012/10/22に大ホールで行われたリサイタル)をさせていただいて以来、特にその美しいデザインと感動的な音響から、京都コンサートホールで音楽作りをできることに惚れ込んでいます。なので、また京都へ戻って、皆さまと音楽を共有できることを大変楽しみにしております。

 

――お忙しい中インタビューにお答えいただきまして、誠にありがとうございました!11月3日の公演を楽しみにしております!


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★特別連載
【第1回】受け継がれる伝統とフィラデルフィア・サウンド
【第2回】アメリカ在住ライターが語るフィラデルフィア管弦楽団の現在(いま)
【第3回】フィラデルフィア・サウンドの魅力
【第4回】指揮者 ヤニック・ネゼ=セガン特別メールインタビュー