オルガニスト ミシェル・ブヴァール 特別インタビュー(2022.11.3オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.70)

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インタビュー

京都コンサートホールの国内最大級のパイプオルガンを堪能できる人気シリーズ「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズ」。記念すべき70回目は、フランスを代表するオルガニスト、ミシェル・ブヴァール氏を迎えます。

待望の京都初公演に向けて、メールインタビューを行いました。
今回ご披露いただくセザール・フランクを中心とした特別プログラムやオルガンとの出会いなど、色々とお話いただきました。ぜひ最後までご覧ください。

——この度はお忙しい中インタビューを引き受けてくださり、ありがとうございます。まずブヴァールさんとオルガンとの出会いについて、教えていただけますか。

ミシェル・ブヴァール氏(以下「ブヴァール氏」):私は5歳からピアノを始め、11歳のときにオルガンを弾き始めました。私の祖父ジャン・ブヴァール(1905-1996)はルイ・ヴィエルヌの弟子で、作曲家でした。私は彼からごく自然な形で、音楽やオルガンに対する情熱を学びました。父は医者だったのですが、彼もアマチュアのオルガン弾きでした。自宅にオルガンがありませんでしたので、父はピアノでバッハの「前奏曲とフーガ」を弾き、私にオルガンのペダル部分を弾くように言いました。
後に、祖父は父に、2つの鍵盤とペダルがついた、イタリア・バイカウント社製の電子オルガンをプレゼントしました。私もその楽器を使って、バッハやヴィエルヌ、そして祖父ジャンの作品を弾き始めました。そして、祖父と一緒に教会に行った時、初めて本物のパイプオルガンと出会ったのです。その出会いは雷に打たれたかのようでした。その時、とても冷たい音がする電子オルガンと自然な音がする本物のパイプオルガンの音の違いを知ることができました。
オルガンも好きでしたが、ピアノも同じくらい好きでしたので、プロのオルガニストとして活動しようと決断する前、20歳くらいまではピアノとオルガンの両方を勉強し続けました。

——そうだったのですね。ブヴァールさんにとって、オルガンに魅せられた点はどういったところでしょうか。

ブヴァール氏:パイプオルガンで最も気に入ってる点は、この楽器が持つマルチで素晴らしい能力です。バッハの作品に見られるようなポリフォニーや対位法を完璧に表現できますし、またクープランの作品が持つフランス的な詩情や音色も表現できます。さらには、交響曲のようなオーケストラの音を模倣することだってできるんです。
あとは、天才的なオルガン製作者による優れたオルガンにも魅力を感じます。たとえば、バッハの時代に活躍したドイツのジルバーマンであったり、フランクの時代に活躍したフランスのカヴァイエ=コルであったり・・・。ヴァイオリンの世界で言えばストラディヴァリウスなどが挙げられますが、オルガンも同様で、非常に名高く、魅惑的な音を持つ楽器が存在するのです。

——パリ国立高等音楽院とトゥールーズ地方国立音楽院の教授を定年退職なさったとお聞きしましたが、最近の演奏活動について教えていただけますか。

ブヴァール氏:2022年度は特別に忙しい1年です。
今年の3月以降、私はリサイタルの他に、ロッテルダム(オランダ)、ブリュッセル(ベルギー)、ハノーファー、ベルリン、ポツダム、ハンブルク(ドイツ)、トゥールーズ、ディエップ、ルション(フランス)、サンセバスチャン(スペイン)、スタヴァンゲル(ノルウェー)、チューリッヒ(スイス)などで、マスタークラス(特に今年生誕200年を迎えるセザール・フランクに関するもの)を行いました。
また、アルクマール(オランダ)やシュランベルク(ドイツ)で行われた国際コンクールの審査員も務めました。また10月にはオランダで、ハーレム・セザール・フランク・コンクールの審査も務めます。
ちなみに今回の11月の日本ツアーの後は、1130日にソウルでも演奏会をする予定です。

——本当に世界を飛び回っていらっしゃるのですね。これまでの演奏活動で印象に残っていることはありますか。

ブヴァール氏:これまで、たくさんのコンサートを行い、素晴らしい楽器にも出会いました。例えば、ドレスデンやフライブルクのジルバーマン製オルガンや、フランスの偉大なカヴァイエ=コル製オルガン、ポワチエのクリコ製オルガン、サン・マクシマンのイスナール製オルガン、ロチェスターのキャスパリーニ製オルガンなどです。そして、パリのノートルダム大聖堂やアムステルダム、ヴェニス、ロンドンのウェストミンスター寺院、リオ・デ・ジャネイロなど、素晴らしい場所でも演奏会をしました。
また2016年、ヒューストン教会で開催された、AGO(アメリカ・オルガニスト協会)の記念公演のように、特別な状況で開催されたコンサートも印象に残っています。このコンサートでは、アメリカの1,000人以上のオルガン奏者の前で演奏したのですよ。とっても緊張しました。

——さて話を今回の京都公演に移します。今回の公演では、生誕200周年を迎えるセザール・フランクの作品を中心に演奏いただきます。フランクのオルガン作品の魅力はどういったところにあると思いますでしょうか。

ブヴァール氏:セザール・フランクのオルガン作品、特に《3つのコラール》は、ベートーヴェンのピアノソナタに匹敵するほどの非常に素晴らしい形式美を備えており、音楽的な深みと内面性を持つ作品です。
この作品特有の詩情や力強さは、全ての人々に感動を与えることができると思っています。

——《3つのコラール》は〈第3番〉を本公演でも演奏くださるということで、楽しみです。今回はフランクの作品だけでなく、古今の作曲家たちの作品をプログラミングしてくださいましたが、その意図を教えていただけますか。

ブヴァール氏:今年はフランクの生誕200年ではありますが、私はフランクだけを取り上げるつもりはありませんでした。フランクの代表的な作品と共に、フランク以前・以降のフランスとドイツで作られた作品を取り上げる方が、京都のお客さまにとって興味深いのではないかと考えたのです。
実際のところフランクは、作曲家としてはドイツ風、オルガニストとしてはフランス風という2つの側面を持っていますし、フランク自身、彼の後継者たちに影響を及ぼしましたので。

——今回のコンサートで弾いていただくフランクの3作品についてご紹介いただけますか。

ブヴァール氏:フランクのオルガン作品として、彼の3つの創作期からそれぞれ1曲ずつ選曲しました。
まず1865年に創作された、有名な〈前奏曲、フーガと変奏曲〉。次に、1878年、トロカデロのコンサートホールに設置されたカヴァイエ=コルのオルガンのこけら落としのために書かれた《3つの作品》から〈英雄的作品〉を演奏します。そして最後に、彼が亡くなる数週間前、18909月に作曲された《3つのコラール》より、第3番を演奏します。

——ありがとうございます。フランク以外の作品についてもご紹介いただけますか。

ブヴァール氏:ルイ14世時代の荘重なフランス形式で書かれた、ルイ・マルシャンによる《グラン・ディアローグ》でコンサートを始めることも楽しみですし、私の師であるアンドレ・イゾワールが見事に編曲したバッハの《4台のチェンバロと管弦楽による協奏曲》を演奏することも楽しみです。また、メシアンの傑作〈神は我らのうちに〉でコンサートの幕を閉じることも幸せに感じています。
ほかにも、私の祖父ジャンの作品や彼の友人であったモーリス・デュリュフレの作品も演奏する予定です。

——私たちもとても楽しみにしております。それでは最後に、お客さまへのメッセージをお願いいたします。

ブヴァール氏:京都コンサートホールの大ホールでリサイタルをさせていただけることを幸せに思います。京都は私の妻である康子が生まれ育った、特別な街であり、40年以上前に初めて京都を訪れて以来、日本の家族に会うために定期的に訪れていますから。
また今回、セザール・フランクに関する、特別なプログラムを準備しました。京都の音楽愛好家の皆様にはぜひともご来場いただき、一緒に音楽を共有したいです。
私は日本を心から愛しています。皆様のために演奏できることは私の大きな誇りであり、大きな喜びです。

——ありがとうございました。11月に京都でお待ちしております。

(2022年8月 事業企画課メール・インタビュー)


★公演詳細《オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.70「世界のオルガニスト“ミシェル・ブヴァール”」》(11月3日)はこちら

★「オルガニストが語るミシェル・ブヴァールの魅力——川越聡子さん インタビュー」はこちら

★ブヴァール氏の演奏&メッセージ動画

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オルガニストが語るミシェル・ブヴァールの魅力——川越聡子さん インタビュー(2022.11.3オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.70)

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インタビュー

京都コンサートホールの国内最大級のパイプオルガンを堪能できる人気シリーズ「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズ」。記念すべき70回目は、フランスを代表するオルガニスト、ミシェル・ブヴァール氏が京都コンサートホールに初登場します。

世界中で演奏活動を行うとともに、パリ国立高等音楽院とトゥールーズ地方国立音楽院で教授として後進の指導にも力を入れてきたブヴァール氏。彼の指導を受けたオルガニストたちは現在、世界中で活躍しています。その一人であり、東京芸術劇場の副オルガニストとしてご活躍中の川越聡子さんに、ブヴァール氏についてさまざまなお話を伺いました。ぜひ最後までご覧ください。 “オルガニストが語るミシェル・ブヴァールの魅力——川越聡子さん インタビュー(2022.11.3オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.70)” の続きを読む

オルガニスト 大木麻理 インタビュー(2021.12.04京都コンサートホール クリスマス・コンサート)

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インタビュー

コロナ禍だからこそ聴いていただきたいコンサートシリーズ『The Power of Music~いまこそ、音楽の力を~』の最終回「京都コンサートホール クリスマスコンサート」。12月4日(土)15時より、京都コンサートホール 大ホールで開催します。

いよいよ冬本番ということで、めっきり寒くなってきた今日この頃。パイプオルガンとハンドベルアンサンブルのハーモニーで一足先にクリスマスの雰囲気をたっぷりとお楽しみいただけるコンサートです。

今回は、クリスマスコンサートにご出演くださるオルガニストの大木麻理さんに色々なお話を伺いました。


大木麻理(オルガニスト)

――2018年に「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.62」にご出演くださった折、和太鼓とのコラボレーションで鮮烈な印象を与えた大木麻理さん。以降、全国各地でパイプオルガンを使った様々な試みに取り組んでいらっしゃいます。今回の演奏会はハンドベルとの共演ですね。クリスマスシーズンにぴったりの組み合わせです。

大木麻理さん(以下、敬称略):そうですね、共演する「きりく・ハンドベルアンサンブル」の皆さんと相談しながら、「クリスマスだから聴きたいよね」という曲をたくさんプログラミングしました。もちろんクリスマスというテーマも大事なのですが、今回の公演のコンセプトは「音楽の力」でしたよね。

――はい、そうです。「クリスマス・コンサート」は、コロナ禍で奔走してくださる医療従事者の方々や、心が疲れてしまっている方、世界中の皆さんにパイプオルガンとハンドベルのハーモニーを京都から届けて、アフターコロナに向けて元気になっていただきたいという思いから企画された公演です。

大木:当初、京都コンサートホールのスタッフの皆さんとお話した時に出たキーワード「祈り」と「復活」はプログラミングの時にすごく意識しました。だからといって畏(かしこ)まるのではなく、演奏を聴いた後に「日常を忘れる特別な時間」「いいクリスマスを迎えられるね」といった想いをお客様に持ち帰っていただきたいです。あたたかな空間を作ることができたらいいなと思っていて、コンサートの最後には「希望の光」が見えるようなプログラミングにしています。

――大木さんは、以前にも「きりく・ハンドベルアンサンブル」と共演なさったことがあるそうで、2年ぶりとのこと。今回共演なさる際に楽しみにされていることはありますか?

大木:きりく・ハンドベルアンサンブルの演奏って、本当に「千手観音」のようなのです。色んな場所から手が綺麗に出てきて、圧巻のフォーメーションで演奏なさるのです。まるで美しいダンスを見ているかのよう。1人につきたった2本の手しか持っていないのに、こんなことができるのかと驚きます。お客様は、耳でも目でも楽しんでいただけることでしょう。わたしもお客さんとして聴きたいくらい(笑)。

「耳でも目でも楽しむことができる」というのは、パイプオルガンにも共通することですね。オルガニストは手と足を駆使して演奏するので、「アクロバットなことをしているね」とよく言われます。

――確かにそうですね。

大木:あとは、「楽器の発音の仕組み」という視点から捉えると、パイプオルガンとベルは正反対の性質を持つ楽器と言えるでしょう。ベルは打楽器の一種ですよね。オルガンが持ち合わせていない要素を持っています。逆も然りです。そういう意味で、お互いにない要素を補い合っているので、音楽的にさらに一つ高みにいくことのできる組み合わせなのではないかと思っています。

――なるほど!そう考えると素晴らしい組み合わせですよね。

大木:そうですね。聴いてくださるお客様は絶対に楽しいと思います。演奏する側の私たちも楽しいですから。

きりく・ハンドベルアンサンブル

――大木さんが京都コンサートホールのパイプオルガンを演奏してくださるのは、今回で2度目になります。

 大木:はい、とても楽しみです。京都コンサートホールのパイプオルガンは一見すると、大きくて厳かな楽器に見えるのですが、実際に音を出してみるとすごく暖かな響きがするのです。ちゃんと奏者と対話しながら鳴ってくれる楽器です。色々なストップがあるので、色々なことにチャレンジできます。個性豊かな、良い音がするストップがたくさんあるのです。もちろんそれらのストップを活かしながら、音を作っていく過程が重要になってくるのですが、古いものから新しいものまで、魅力的に弾くことのできる楽器です。

――いま「音作り」のお話をしてくださいましたが、実際にはどのように音色を選んでいかれるのですか?

オルガンを弾く大木さん

大木:方法は色々とありますが、まずはその楽器の特性を活かせる選曲をするように心がけています。次に、実際に楽器を演奏しながらレジストレーション(ストップを選択し、組み合わせることにより音色を作っている作業のこと)を行う際には、その楽器が持つ音色は全部使おうと思っています。これは、私のポリシーですね。どのようなストップでも、その存在価値を発揮させたいなと思っています。

あとは、その曲が書かれた背景を意識するようにしています。例えば、今回演奏するリスト作曲の《バッハのカンタータ「泣き、嘆き、悲しみ、おののき」による変奏曲》に関して言うと、リストがイメージしたであろう音色や、当時のリストが耳にしたであろう楽器の音色を想像します。そして、私が演奏する楽器からそういったものを引き出すためにはどのようにすれば良いか、非常にこだわって音作りを行います。

――当ホールのパイプオルガンには本当にたくさんの種類のストップがあるので、大木さんがそれらをどのような組み合わせで使ってくださるのか、今からとても楽しみです

大木:ありがとうございます。

――さて、最後の質問をさせてください。インタビュー冒頭で本公演のコンセプトである「音楽の力」について少し触れました。このコロナ禍において、大木さんと「音楽」の関係性に変化はありましたでしょうか。

大木:そうですね、「音楽はやっぱり必要なんじゃないか」と思うようになりました。

2020年の最初のパンデミックの時、予定していたコンサートが全てキャンセルされたんですよね。その時は「自分の存在価値はないのだろうか」と思ったりもしました。でも、人間って生まれてから死ぬまで、どこかで必ず「音楽を聴いている」でしょう。そう考えると、私にとっても、その他の人にとっても「音楽は絶対に必要なものだ」と思うようになりました。コロナ禍において、それを初めて確信できたというか。音楽は当たり前に存在していますが、「ただ存在する」のではなく「人生にとって必要なものである」と皆さんが考えてくださったら嬉しいなと思っています。

――私もそう思います。特に我々は「ライブ演奏」を生業としている者ですから、このような時期ではありますが、お客様にはコンサート会場にお越しいただき、ぜひとも生演奏を聴いていただきたいと思っています。

(C)Takashi Fujimoto

大木:そうですよね。特に、パイプオルガンやハンドベルは生演奏で聴いていただくのがベストであると思います。コロナ禍でコンサート配信も増えましたが、パイプオルガンって配信には向かない楽器なのですよ。もちろん、配信にも良い点はありました。例えば、普段は客席から見えないオルガニストの手や足の動きを画面越しに見ていただいたり。そういった面白い機会を作ることはできましたが、やっぱりパイプオルガンの醍醐味ってホール中に鳴り響く音を身体で感じていただくことだと思うのです。その体験は配信やCDでは味わえないものです。ぜひとも、生演奏を聴きにご来場いただけたらと思います。

――本当にその通りです。実際にホールでパイプオルガンの音を聴くと、足元から頭の先までパイプオルガンと身体が“共鳴する”感覚を味わうことができます。今回は、パイプオルガンに加えてハンドベルの美しいハーモニーをも堪能することができる貴重な機会です。コンサート当日を楽しみにしています。
今日はたくさんのお話をお聞かせくださり、ありがとうございました!

(2021年9月 Zoomにて)

《京都コンサートホール クリスマス・コンサート》の公演情報はコチラ

アダム・タバイディ氏 特別インタビュー(2/22オムロン パイプオルガン コンサートシリーズ Vol.65「世界のオルガニスト」)

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オルガン

2020年2月22日(土)14時開催「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.65“世界のオルガニスト”」では、世界で活躍するハンガリー出身の若手オルガニスト、アダム・タバイディさんをお迎えします。タバイディさんは2019年9月から、第21代札幌コンサートホール専属オルガニストを務めている、いま注目のオルガニストです。

今回の京都初公演に向けてメールインタビューを行いました。オルガンの魅力やパリ・ノートルダム大聖堂でのオルガン研修生時代に関するお話をたくさん聞かせてくださいました。

――タバイディさんこんにちは。このたびはインタビューの機会をいただき、ありがとうございます!さて、早速ですが、まずタバイディさんがオルガンを始められたきっかけから教えていただけますでしょうか?

アダム・タバイディさん(以下“タバイディさん”):ピアノとトランペットを6歳から習いはじめました。子どもの頃、よく教会に連れて行ってもらっていて、オルガンの演奏をいつも聴いていました。その美しい音色にとても魅了されていました。そして今後の進路を決める時、たしか14歳の時だったと思いますが、両親の友人で、地元の音楽大学で教授を務めていた有名なオルガニストの薦めでオルガンを始めました。

――そうだったのですね。楽器を始められてから10年以上経った今、タバイディさんはオルガンのどんな魅力を感じていらっしゃいますか?

タバイディさんオルガニストという仕事をしていて最もワクワクすることは、二つとして同じ楽器がないパイプオルガンを演奏できることです。新しいオルガンと出会うたびに、まるで初めて会った人同士のように、お互いのことを知ろうとします。どのオルガンにも個性や特有の雰囲気があり、演奏者自身にもそれぞれ個性があります。そして、オルガンは、ほとんど聞こえないぐらい小さな音から迫力ある大きな音まで、無数にある音色を組み合わせながら、色彩豊かに表現することができます。この多様性は、数ある楽器の中でもオルガンならではだと思っています。

――時代や国によって、様々なタイプの楽器がありますよね。タバイディさんは歴史的オルガンについて勉強されたそうですが、具体的にどのような勉強をされましたか?

タバイディさんその昔、オルガン製作は楽器の演奏技法と非常に密接な関係にありました。具体的に言いますと、オルガンの作曲家たちはオルガン製作者と密につながっており、互いに意見を共有しながら作曲を進めていました。そのため、オルガニストにとって歴史的オルガンは「最高の先生」なのです。

歴史的オルガンを弾く際、現代の演奏方法ではふさわしくないことがあります。例えば、歴史的オルガンの送風システムは、現代のオルガンとは全く異なり、20世紀初頭までは人力で風が送り込まれていました(注:現代のオルガンは大きな送風機が備えられている)。この構造を持つ楽器を演奏する際、例えばとても短い音は演奏できないなど、演奏の際に細心の注意が必要なんです。

―― オルガンは同じ楽器が二つとない、ということですが、初めての会場に行く時や初めてのオルガンを触る時に心がけていることなどがあれば教えてください。

タバイディさん私はいつもオルガンのストップリスト(注:楽器の全てのストップが掲載されたリスト)を研究し、覚えるようにしています。そして、新しい楽器に出会うたびに、私は全てのストップを試してみて、その後で音色の組み合わせを決めています。この作業を「レジストレーション」というのですが、とても重要な作業です。
大きなオルガンでは、この作業に1時間以上かかりますが、作品ごとに最も合った音色を簡単に見つけることができるので、手間をかける価値があります。演奏台がオルガンとくっついている場合は、弾きながら楽器から出る本当の音を聴くことができないため、別の人にオルガンを弾いてもらい、自分は客席で響きを確認したりします。

――何十もあるストップリストを覚えられているのですね!京都コンサートホールには、楽器から離れて演奏できる演奏台もあります。
オルガン演奏において重要なレジストレーションについて、オルガニストたちは普段どのように勉強しているのでしょうか。

タバイディさん音楽大学等で勉強している時に、非常に大切な練習として、どのようにレジストレーションを行うか先生に指導してもらいます。一人でオルガンに向き合う時間が段々と増えていくと、オルガニストの個性がレジストレーションに出てくるようになっていきます。

――タバイディさんは、かつてパリ高等音楽院でオルガンを学ばれていました。パリといえば、いま復旧中のノートルダム大聖堂で、初のオルガン研修生を務められたということですが、具体的にどのような活動をされていたのですか?

タバイディさんノートルダム大聖堂では教会行事に参加していました。最初の頃は、専属オルガニストの傍で、礼拝者が訪れる時どのように演奏するかを聴いて勉強していました。後に、大聖堂の合唱団が行うミサの伴奏を務めるなど、徐々に教会業務にも加わるようになりました。

――すごいですね!あのノートルダム大聖堂で……と考えるとわくわくします。
さて、タバイディさんは去年の9月から北海道・札幌に居住し、Kitara専属オルガニストとして活動されていますが、札幌での生活はいかがですか?

タバイディさん:札幌での生活は本当に楽しいです。札幌コンサートホールのスタッフのサポートで、ほぼ100%専属オルガニストの仕事に集中することができています。この仕事は私の人生にとって、またとない非常に貴重な機会です。
札幌コンサートホールのスタッフは本当に親切ですし、日本料理も美味しいです。それに、札幌の街は穏やかで、とても魅力的な所です。

――今回、初となる京都公演で演奏されるプログラムを拝見しましたが、とても興味深いものでした。選曲理由と聴きどころをそれぞれ教えてください。

タバイディさん今回のコンサートでは、3つの要素から構成される、バラエティーに富んだプログラムをお届けします。ドイツとフランスのいわゆる「伝統的な」オルガン音楽、さまざまな国の民族音楽、そして私の故郷ハンガリーの音楽をお楽しみいただきます。

――とても楽しみです!それでは最後に、演奏会を楽しみにしている皆さまへ、メッセージをお願いいたします。

タバイディさん京都コンサートホールで皆さまにお会いすることができて本当に光栄です。この美しいホールと皆さまへ色彩豊かなプログラムをお贈りします。どうぞコンサートをお楽しみください。

――お忙しい中インタビューにお答えいただきありがとうございました!演奏を聴けますことを楽しみにしております!

(2020年1月事業企画課メール・インタビュー)

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オルガニスト大木麻理 特別インタビュー(9/8オムロン パイプオルガン コンサートシリーズ Vol.62「オルガニスト・エトワール」)

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人気シリーズ「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズ」の62回目、“オルガニスト・エトワール”にご出演いただく大木麻理さん。

大木さんは、第3回ブクステフーデ国際オルガン・コンクール優勝など輝かしい受賞歴を持つ、今注目のオルガニストです。その活躍は飛ぶ鳥を落とす勢いで、今年4月からミューザ川崎シンフォニーホールのオルガニストに就任されました。

今回、京都コンサートホール初登場を記念して、国内オルガニストの期待の星“エトワール”である大木さんに、オルガンの魅力や珍しい和太鼓との共演についてなど色々とお話を伺いました。

――こんにちは!この度はお忙しい中ありがとうございます。
まず大木さんのオルガンとの出会いをお聞かせいただけますでしょうか?

大木さん:小学校4年生の時に、地元静岡に新しいコンサートホールが完成し、そこにパイプオルガンが入りました。市民を対象に新しいオルガンの見学会が開催され、そこに参加したのがオルガンとの出会いです。
その豪華な見た目と、音色に一瞬で心をつかまれ・・・今に至ります!

――パイプオルガンは他の楽器にはない圧倒的な存在感がありますよね。大木さんにとって、パイプオルガンの魅力とは何でしょうか?

大木さん:心の琴線に触れるような繊細な音色から、天地がひっくり返りそうなダイナミックな音まで、一人で奏でることができることです。
また手だけではなく足を使って演奏したり、ストップ操作など、大きなおもちゃを操っている様な感覚になります。

――オルガニストの方々が両手両足を駆使して、大きなオルガンから様々な音色を引き出されている様子にはいつも感銘を受けます。この4月から務めていらっしゃる「ミューザ川崎シンフォニーホール・オルガニスト」について、具体的にどのようなお仕事をなさっているのか教えていただけますでしょうか。

大木さん:ソロやオーケストラとの共演など演奏のお仕事はもちろんのこと、「弾き込み」と称して、ホールが空いている時間は出来るだけ多くの時間楽器を鳴らすようにします。その中で楽器に不調がないか、チェックをしてオルガンが常に良い状態に保たれるように努めています。また外部からオルガニストをお招きする際には、その公演が円滑に進み、気持ちよく演奏をしていただくために“黒子”のような存在になることもあります。
そしてオルガンの魅力を一人でも多くの方に知っていただくため、オルガンの見学会やレッスンなども行っています。

(C)Mari Kusakari

――演奏だけでなく、様々な形でオルガンと関わっていらっしゃるのですね。大木さんは大学で教鞭も取られていますが、「教える」ことはお好きですか?また、「教える」ことによってオルガン演奏にどのようなプラス面がありますか?

大木さん:教えることは好きです。大きなやりがいを感じています。自分が教わってきたことを多くの人に伝えたいと思いますし、そのことがオルガンを習う人にとって何か助けになると嬉しいと考えています。レッスンをすることで音楽や演奏法などを客観的にそして冷静に見ることができ、自分が弾いている時には気付かない悪い癖などを知ることができます。
逆に生徒さんのオルガンと向き合う姿勢から学ぶことも沢山あり、レッスン後にはいつもオルガンが弾きたくなるんです!

――レッスン後でも弾きたくなるほど、オルガン愛に満ち溢れた大木さんから教えてもらえる生徒さんは幸せですね!
今回の演奏会では和太鼓との珍しいデュオを聞かせてくださいますが、なぜ今回和太鼓を選ばれたのでしょうか?

大木さん:いつかオルガンとコラボレーションしたい楽器の筆頭に「和太鼓」がありました。私の長年の夢だったのです!躍動感溢れる音、リズム、そして奏者の肉体と(誤解しないで下さい 笑)魅力的な要素が沢山詰まった楽器だと思います。

そしてもう一つの理由にオルガンと打楽器の相性の良さがあります。オルガンは繊細な音から地を揺らすような音まで、非常に大きなダイナミックレンジを持つ楽器ですが、アンサンブルをする時にお互いに音量の遠慮し合うことなく、つまりオルガンと対等のダイナミックレンジを持つ唯一の楽器が打楽器だと思います。

昨今ではオルガンとクラシック楽器としての打楽器との演奏機会は増えてきましたが、和太鼓はとても珍しいですよね・・・。日本人として日本の楽器を大切にしたい気持ちもあり、今回は同じ打楽器でも「和」なものを選んでみました。

大多和正樹(和太鼓)

――夢の共演を京都コンサートホールで聴けるのはとても楽しみです!
今回のプログラムの冒頭に演奏される、大木さんお得意の作曲家ブクステフーデについて、彼の作品の特徴や魅力などを教えていただけますでしょうか。

大木さん:得意なのかは正直わかりません・・・笑。でも大好きな作曲家の一人です。ブクステフーデの存在なしには、恐らくJ.S.バッハは誕生しなかったでしょう!
(青年バッハが約400kmの道のりを歩いて彼の演奏を聴きに行き、その虜になったという逸話が残っているくらいですから。)
ブクステフーデの音楽は、私にとって非常に「魅惑的」です。一筋縄ではいかない音楽の進行、そしてドラマチックなお芝居を見ているかのような劇的な音楽の展開に心を摑まれています。

――ブクステフーデはオルガン界にとって大切な存在で、時代や国を越えて多くの人を惹きつけた作曲家なのですね。
ところで、今回のプログラムについて、テーマや聴きどころをお教えいただけますでしょうか?

大木さん:私の中でのテーマは「未知への挑戦」です!オルガンと和太鼓によってどんな音楽が誕生するのか、私自身もわからないのです。でも面白いものになるという確信は持っています。
本音を言うと、私も一聴衆としてこの演奏会を聴きたいくらいです!
そして聴きどころは・・・「全部」!!

――プログラムを最初に拝見した時からずっとワクワクしております!
それでは最後に、演奏会を楽しみにしている皆さまへ、メッセージをお願いいたします。

大木さん:オルガンと和太鼓が一緒に演奏するなんて、どんな演奏会になるのだろう・・・と思われているお客様もいるのではないかと想像していますが、安心してください!きっとオルガンの新たな魅力を感じて頂ける機会になると思います。

個人的に最近気に入っている言葉に「オルガン浴」というものがあります。オルガンを聴くのではなく、リラックスしてオルガンの音を浴びて頂きたい、と思いついた言葉です。日光浴、森林浴などと並んで、この言葉がスタンダードになったら嬉しいな・・・なんて思っています。

初めての京都コンサートホールですが、新しいオルガンとの出会い、そしてお客様との出会いを今から心待ちにしております。オルガンの音を思う存分浴びにいらして下さい!

――色々なお話を聞かせてくださいまして、誠にありがとうございました。9月の公演がとても楽しみです!

(7月31日 京都コンサートホール事業企画課 メールインタビュー)

♪♪ 公演情報 ♪♪

オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.62「オルガニスト・エトワール」

2018年9月8日(土)14:00開演(13:00開場)大ホール
[オルガン]大木 麻理(ミューザ川崎シンフォニーホール・オルガニスト)
[ゲスト]大多和 正樹(和太鼓)

[曲目]
ブクステフーデ:前奏曲 ト短調 BuxWV149
J.S.バッハ:トッカータとフーガ ニ短調 BWV565
J.S.バッハ(A.ラントマン編曲):シャコンヌ(無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番より)
ボヴェ:「東京音頭」による幻想曲
ラヴェル(K.U.ルードヴィッヒ編曲):ボレロ
ほか

[チケット料金]
全席自由 一般 1,000円 高校生以下 500
〈京都コンサートホール・ロームシアター京都Club、京響友の会の会員〉 900円

※障がいのある方:900円(同伴者1名まで)
京都コンサートホール・ロームシアター京都のみで取扱。
窓口でご本人様が証明書等をご提示ください。

詳しくはこちら♪

オルガニスト 近藤岳氏 特別インタビュー(オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.61「オルガン・ポップス」)

投稿日:
オルガン

2月24日午後2時開演「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.61 『オルガン・ポップス』」に、ミューザ川崎シンフォニーホール専属オルガニストの 近藤岳(こんどう・たけし)氏が登場します。
彼が今回選んだプログラムのテーマは、ずばり「宇宙」。
時代・国・ジャンルの垣根を越えて、果てしなく続く「宇宙」をパイプオルガンで描きます。
華麗な演奏技巧で紡がれる雄大な宇宙のドラマは必聴必見です。

さて、京都コンサートホールには2度目の登場となる近藤氏。
皆さまに近藤氏の魅力をより知っていただくために、今回さまざまな質問をぶつけてみました。オルガンのこと、当日のプログラムのこと、そして趣味のことなど…。
どの質問にも真摯に答えてくださった近藤氏、とても楽しいインタビューとなりました。

©青柳聡

――近藤さん、こんにちは!2010年9月に京都コンサートホールでオルガン・コンサートを開催してくださいましたね。それから8年弱経つわけですが、今日はその時にお伺い出来なかった色々なお話をお聞きしたいと思っています。どうぞ宜しくお願いします。
それではまず、近藤さんがオルガンを始められたきっかけについて教えていただけますでしょうか。

近藤岳氏(以下敬称略):オルガンを弾き始めた直接のきっかけは、僕が藝大(東京藝術大学)の作曲科に入学してからでした。

――それは少し意外な感じがします。作曲科って作曲の勉強ばかりするのだと思っていました。

近藤岳:いえいえ、専攻の作曲以外にも、「副科」といって専攻以外の楽器を履修することが出来るのです。迷わず副科はオルガンを選択しました。直にパイプオルガンに触れたのはその時が初めてでした。

――それまでにもオルガンには親しみがあったのでしょうか?

近藤岳:オルガンの響きに初めて触れたのは、小学生の時に家にあった「クラシック名曲選」なるカセットテープの中の、J.S.バッハの有名な「トッカータとフーガ ニ短調 BWV565」でした。トッカータ冒頭のあの鮮烈なユニゾンメロディーに、この世のものとは思えない「怖さ」を感じ、でもそれでいて、どこか気になるような、また聴きたくなるような、どうしたらあんな音が出るのかなぁ…とぼんやり考えていました。
しかし、高校に入ってからは作曲の勉強で頭が一杯になり、トッカータの怖さはすっかりどこかへ飛んでいってしまいました。
時は巡り、大学入学後、2年生で副科オルガンが選択できるようになり、いよいよオルガンと出逢うチャンスがやって来ました!
藝大のオルガン教室の一つに、三段鍵盤のやや大きめの・・・・・・そう、京都コンサートホールのオルガンと同じクライス社が製作した楽器がありますが、レッスンで初めて触れた時、何とも言えない不思議な感覚を覚えました。
鍵盤を弾くのにパイプから音が出るという、鍵盤楽器なのに管楽器という面白さ!
ただ、ピアノのように、音の強弱をタッチで表現できない難しさと複雑さを同時に味わいました。自分の意のままに演奏出来ないのです。
弾いてみたい曲が思いのままに弾けない…。どうしてだろう?と強く感じて、もっと上手に弾けるようにならないものか?と悶々としていました。

京都コンサートホールのパイプオルガン

――あらまぁ、ファーストコンタクトはなかなかほろ苦いものだったのですね。

近藤岳:そんなある日…あれは作曲科4年の時でしたね、作曲のレッスンで自作曲のピアノパートを恩師に聴いて頂いていた時のことです。恩師のさりげない一言が僕を思わぬ方向に突き動かしました。
「君には演奏家の気質もあるよ、作曲はもちろんだけど、今後演奏の勉強も何か本格的にした方がいい。」
…確かにピアノは好きでたくさん弾いていましたが、学校にはプロ級のピアノ科の学生がわんさかいて、その凄さを目の当たりにしていましたし、ピアニストなんて到底無理だと感じていました。
と同時に、なぜだか「オルガンをしっかり勉強するのはどうか?」と強い衝動に駆られたのです。新しい未知の世界に突然光が差し込んだように、「やりたい、やらなきゃ!」と思ったのです。それが大きな契機となり、当時副科オルガンを師事していた今井奈緒子先生にご相談し、作曲科卒業後に別科オルガン専攻を受験して、今度はオルガン科の学生へと転身しました!いよいよそこから本科的なオルガンの勉強が始まりました。

――近藤さんのお話を聞きながら「これが縁というものなのかな」と思いました。まぁ、それを「必然」とも言うのですけど…。そこまで近藤さんを突き動かしたパイプオルガンの魅力ってどこにあるのでしょうか?

近藤岳:やはりパイプからほとばしる「持続音」を両手両足を駆使して、何声部も同時に表現できることでしょうか。こんな楽器はオルガン以外無いように思います。全身を使って「歌」を歌う、楽器と空間と一体になって歌を歌えることが僕にとって一番の魅力です。またそれらの歌を、実に様々な音色を伴って表現できることもオルガンの醍醐味だと感じています。

2010年9月25日の公演から(京都コンサートホール)

――ところで、近藤さんが京都コンサートホールで演奏してくださるのは実に8年弱ぶりになりますね。
わたしたちのホールの楽器はいかがでしょうか?

近藤岳:もうずいぶん前に伺ったので、次回2月に演奏させて頂く時には新たにどんな印象を受けるか今から楽しみなのですが、初めて伺ってリハーサルをさせて頂いた時は、音色(ストップ)の数も大変多くて、さてどうやって理想の音を作り上げようか?とワクワクしたのを覚えています。目の前にたくさんの食材が置かれていて、メニューを考えているうちに、脱線して次のメニューが思い浮かぶ…というような(笑)。
また、楽器を正面からご覧になってお分りかと思いますが、各鍵盤ごとのパイプ群が演奏台よりも右側に多く集まり、アシンメトリーに配置されているので、かなり面白いパイプの鳴り方をするなぁ!と思ったのを覚えています。
楽器の特性としては、ストップも多く、大きな響きのシンフォニックな楽曲が得意なのでは?と当時感じましたが、ひょっとしたら2月に伺う時にはまた違う印象を持つかもしれませんね。
久々に楽器と対面して、リハーサルで個々のパイプをゆっくり味わいながら、その時感じる直感やニュアンスを大事にしつつ、レジストレーションに反映してみたいと思っています。

2010年9月25日の公演から(京都コンサートホール)

――わたしたちも『近藤さんはどんな音色を作ってくださるんだろう』と今から楽しみにしているんです。というのも、今回近藤さんが組んでくださったプログラムが面白いからです。

近藤岳:この度2回目となるこのコンサート出演のご依頼を頂いた時に、新たに「オルガン・ポップス」と銘打たれており、「もしや本当にポップスを弾かなければならないのか?」と思い、ビビっておりました。実際、弾くことは出来るのですが、よほど見事に編曲演奏しないとパイプオルガンでポップスは似合わないのです…サマにならない、と言った方が良いでしょうか。何で無理してオルガンでポップスを弾くんだろう、ギターやドラムが入った編成で聴いた方がよっぽどいい、となってしまっては元も子もないからです。

――いやぁ、なんだか悩ませてしまったようで申し訳ないですね(苦笑)

近藤岳:しかし、「オルガンで聴いたら良さが倍増!」とか「オルガンの響きが実はとても合う!」という楽曲ならば上手くいくかも知れない…と思い、今専属オルガニストを務めているミューザ川崎シンフォニーホールの公演企画で、これまでに何度か演奏して好評を頂いたJ.ウィリアムズの「スター・ウォーズ」のメインテーマを入れてみようかな、というところからプログラミングを始めました。映画をご覧になったり、このテーマ曲をお聴きになった方もたくさんいらっしゃいますよね。

――超有名曲ですからね。お客さまは大喜びだと思います。

近藤岳:また、「ポップス」というネーミングを「ポピュラリティー」という言葉に置き換えて考え、ぜひ一度は聴いて頂きたいオルガンの名曲をプログラムに含めることも念頭に置きました。そして、そこから浮かび上がってきたのは、いっそ「天体」や「宇宙」になぞらえた楽曲を配して、コンサートの初めから最後まで、皆さん思い思いにストーリーを描いて頂けるようなことが出来ないかな?というアイデアでした。
また同時に、多種多様なオルガンの響きを存分にお楽しみ頂きたい!という欲張りなアイデアも浮かんだり…。最終的に出来上がったプログラミングでは、例えばバロック時代のブクステフーデからバッハの音楽的なつながりをご紹介したり、フランス近代のヴィエルヌが描く美しい「月の光」と現代のグバイドゥーリナの前衛的な「光と闇」が、それぞれの音響と手法で光と影の妙なるコントラストを浮かび上がらせたり…と、バロック〜現代の曲想の振れ幅はもちろん、緩急を大いに織り交ぜて、およそ300年の時空を音で自由に行き来し、旅をするようなプログラムに至りました!
ちなみに、オープニングの「太陽への讃歌」とエンディングの「スター・ウォーズ」の終盤が同じト長調なのですが、両方とも壮大な響きで、実はコンサートのプロローグとエピローグに見立てているのも、ちょっとした工夫です。
皆さんの琴線に少しでも触れる曲や、オルガンの響きがあれば…と願っています!

2010年9月25日の公演から(京都コンサートホール)

――良いことを教えていただきました、オープニングとエンディングに注目しますね。楽しみがまたひとつ、増えました!さて、プログラムの中には近藤さん作曲の《きらきら星変奏曲》が組み込まれています。これはどのような作品ですか?

近藤岳:この変奏曲は、2003年に横浜みなとみらいホールからの依頼で、オルガンの音色紹介になるものを…というご依頼で作曲したものです。懐かしいですね。
ホールオルガニストの三浦はつみさんによって初演され、非売品ですがホールのオルガンCDに収録されました。皆さんおなじみの「きらきら星」のメロディーを用いて、代表的なパイプの音色のキャラクターをそのまま各変奏の曲想に反映して作曲しました。
かなり昔の作品なのですが、僕の作品の中で一番多くのオルガニストに演奏されている曲かもしれません。初めてオルガンの響きを耳にするお客様も音色を楽しく聴き比べられるようで、そこが様々なオルガニストに取り上げて頂ける大きな理由のようです。
今では日本のみならず欧米でも演奏される機会も多く、嬉しいような恥ずかしいような…。
ただオルガニストの皆さんがおっしゃるのは、楽しい曲想に反して弾くのが難しい…と(笑)。
京都コンサートホールでも演奏して頂いたことが何度かあるとお聞きしており、今回自身による演奏も実に数年ぶりで、身が引き締まる思いです!
オルガンの様々な音色を味わって頂きたいのと、プログラムのアイデアである「天体・星」繋がりということもあり、半ば強引にプログラムに入れてしまいました(笑)。

――作品は演奏機会に恵まれてこそ存在意義が生まれると思いますので、たくさんの方々に演奏されているのはとても幸せなことですよね。
…と、ここまでずっとオルガンの話ばかり聞いてきましたが、このあたりでチョット違う話題を入れてみたいと思います。近藤さんが最近夢中になっている事や物について、ぜひ教えていただきたいです。

近藤岳:そうですね・・・・・・週に一度は美術館巡り…などとオシャレなことを言いたいところですが、実際は寝る前一時間の、ベッドに潜り込んでスマホ片手にYouTube、です(笑)。

――おっ、YouTubeですか…(笑)

近藤岳:はい。見るのはもっぱらクラシックやオルガン動画…と言いたいところですが、ほとんど見ません。いつも見るのは、お笑いと昭和のバラエティとか歌謡曲など。寝る前に大笑いしたり口ずさんだりして、気がついたら寝ています。
あと、なぜか動物の動画を定期的に見てしまいますね…特に犬やハシビロコウの動画なんかを見てます。授業中に学生に話すと笑われちゃうんですけどね!
皆さんはいかがでしょうか?何か面白い動画があったら、ぜひこっそり教えて下さい!

――お笑い?!昭和のバラエティ?!きっと学生さんたちは、オルガンの前の近藤さんとのギャップが激しすぎて笑っちゃうんでしょうね。皆さん、面白動画があれば、ぜひ近藤さんに教えてさしあげてください(笑)。
いや~とても楽しいインタビューでした。お忙しいところ、誠にありがとうございました!2月24日のコンサートを心待ちにしています。

2017年12月26日、京都コンサートホール事業企画課インタビュー (た)

【公演レポート】オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.60(9/16)

投稿日:
オルガン

去る9月16日(土)に開催されました、オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.60「世界のオルガニスト」は、大盛況のうちに終演いたしました。台風前日でお足元が悪い中、多くのお客さまにお越しいただき、感謝申し上げます。今回は公演の様子をお伝えいたします。


考え抜かれたプログラム

京都初登場となったエスピナス氏は、バロック時代から現代作品まで、オルガンを堪能できる充実のプログラムを披露しました。しかも、ただ曲を並べるだけではなく、プログラム全体からエスピナス氏の思いや意図が伝わる、見事なプログラミングでした。

今回のプログラムについて

前半は、私の師であるアンドレ・イゾワールに対するオマージュです。彼は演奏家としても(素晴らしいグリニー全曲録音を出しています)、バッハ作品の編曲者としても、作曲家としても活躍しました。後半は、20世紀フランスの偉大な2人のオルガニストであるルイ・ヴィエルヌとモーリス・デュリュフレへのオマージュです。デュリュフレの《前奏曲、アダージョと「来たれ、創造主よ」の主題によるコラール変奏曲》は、プログラム冒頭に演奏するグリニーの作品に呼応しています。

フランソワ・エスピナス


荘厳なグリニーから変幻自在のイゾワールまで

パイプオルガン史における「フランス古典」の礎を築いたニコラ・ド・グリニー (1672-1703) による、賛歌〈来たれ、創造主よ〉からプログラムは始まりました。
エスピナス氏は、曲の冒頭でグレゴリオ聖歌「来たれ、創造主よ」の旋律を右手で奏でました。実は、プログラム最後の曲(デュリュフレの《「来たれ、創造主よ」の主題による前奏曲、アダージョとコラール変奏曲》)の冒頭でも同じ旋律を同様に奏したのですが、これは両曲ともにグレゴリオ聖歌「来たれ、創造主よ」をテーマに作曲されたためです。

グリニー作品の第1部「テノール声部に定旋律を持つ5声の『来たれ、創造主よ』」は、輝かしい響きで始まりました。あの響きは、「プラン・ジュ(Plein jeu)」と呼ばれる、オルガンの正面に並ぶパイプを中心としたプリンシパル族の合奏で作り出されたものなのですが、音(=jeu)がいっぱいに(=Plein)満ちるというフランス語のとおりに、聞き惚れんばかりの美しい響きがホールを包み込みました。

続いては、グリニーの曲を写譜して勉強していたとされるJ. S. バッハ (1685-1750) による作品、《無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番BWV1001》の第1楽章〈アダージョ〉《カンタータBWV29》より〈シンフォニア〉(※オペラの序曲のように管弦楽のみで演奏される)が演奏されました。いずれの作品もエスピナス氏の師イゾワールによる編曲が施されているのですが、原曲がヴァイオリンや管弦楽のものとは思えないほど、パイプオルガンの響きに馴染む作品でした。

前半プログラムを締めくくったのは、イゾワール作曲《ユグノー詩編による変奏曲》。親しみやすいテーマがめまぐるしく変奏していくさまは圧巻で、聴衆アンケートでも高い評価を得ました。


大オルガンの魅力を活かしたフランスの作品たち

後半プログラムでは、20世紀フランスで活躍を遂げた2人の偉大なオルガニスト、ルイ・ヴィエルヌ (1870-1937) とモーリス・デュリュフレ (1902-86) の作品が取り上げられました。
彼らの作品にみられる魅力はなんといっても、その燦爛たる色彩感と立体感。多彩な音色選びや幅広いダイナミクスからは、大オルガンの果てしない可能性を感じさせられます。

パリ・ノートルダム大聖堂のオルガニストを務めたヴィエルヌ作曲〈ロマンス〉(交響曲第4番ト短調op.32より)は、穏やかな伴奏をバックに、低音から高音まで美しく歌われました。それはまるで、夜空に浮かぶ小さな星のようにそっときらめく音でした。
同じくヴィエルヌの〈ウエストミンスターの鐘〉op.54-6は、学校のチャイムでお馴染みの鐘のメロディーが使われていて、「オムロンパイプオルガンコンサートシリーズ」でもよく演奏されている曲です。最初は遠くから聞えてきたテーマが、フィナーレに向かってゆっくりと盛り上がっていき、最後はまるでウエストミンスター大聖堂の鐘が鳴り響いているかのごとく、輝く音のシャワーがきらきらと降り注ぎました。

プログラム最後は、デュリュフレ作曲の《「来たれ、創造主よ」の主題による前奏曲、アダージョとコラール変奏曲op.4。作曲者の師であるヴィエルヌに捧げられた大作です。「デュリュフレ」といえば《レクイエム》をイメージされる方が多いと思いますが、このオルガン曲が持つ壮大さを前にすると、彼がいかに傑出したオルガニストだったかが手に取るように分かります。

超絶技巧を駆使しながら、この25分にもおよぶ大曲を完璧に弾きこなしたエスピナス氏。万華鏡のように次々と移り変わる音色に、会場からは感嘆のため息が聞こえてきました。また、フォルテッシモの箇所では大オルガンの雄大さを、ピアニッシモのところでは神秘性を感じさせられました。パイプオルガンが持つ音色の多彩さに圧倒された方も多かったのではないでしょうか?

「コラール変奏曲」では、プログラム冒頭のグリニーでも鳴り響いた、輝かしい「プラン・ジュ」の響きが再びホールを満たしました。そしてテーマがさまざまな形で出現し、ホール全体を揺るがすような大音量がパイプオルガンから轟いたところで、曲一番のクライマックスを迎えました。耳のみならず、足の裏から体の芯まで、パイプオルガンの「響き」を体感していただけたことでしょう。

プログラムを通して、素晴らしい演奏を繰り広げてくれたフランソワ・エスピナス氏。お客さまからのアンケートからは、「オルガンの響きを聴いているだけで心地よい」「初めて聴いたが深く感動した」など賞賛の声が多く寄せられました。

エスピナス氏のサイン「今日、京都で演奏出来たことを光栄に思います」

近日、当日の録音(!)を数曲ホームページ上で公開する予定ですので、どうぞお楽しみに!

■次回予告

次回の「オムロンパイプオルガンコンサートシリーズVol.61」(2018年2月24日開催)は、ミューザ川崎シンフォニーホール専属オルガニストの近藤岳氏が登場!8年ぶりに京都コンサートホールのパイプオルガンを演奏していただきます。近藤氏が選んだテーマはずばり「宇宙」。パイプオルガンを使ってどのような「宇宙」が描き出されるか、どうぞご期待ください。(な)

フランソワ・エスピナス 特別インタビュー

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インタビュー

9月16日(土)午後2時開催「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.60 『世界のオルガニスト』」。ヴェルサイユ宮殿王室礼拝堂首席オルガニストのフランソワ・エスピナスが、十八番のフランス音楽を中心に魅惑のプログラムを組みます。おかげさまでチケットは完売となりました。
今回、フランソワ・エスピナス京都初公演を記念して、特別インタビューをみなさまにお届けします。オルガンとの出会いからフランス珠玉のオルガン・レパートリーの話まで、フランス随一のオルガニスト フランソワ・エスピナスの素顔を知ることが出来る貴重な内容です。

©Emma POMMER

――現在エスピナスさんは、フランスを代表するオルガニストとして国内外で大活躍されていらっしゃいますが、オルガンを始められたきっかけは何ですか?
フランソワ・エスピナス氏(以下エスピナス、敬称略): 私は昔、アルビという南仏の街に住んでいたのですが、そこにはとても美しいパイプオルガンを備える素晴らしい教会がありました。そのオルガンを聴いた時、恋に落ちたのです。たしか、8歳か9歳の時でした。それからピアノを習い始めて、13歳の時にオルガンを弾き始めました。

アルビ大聖堂のパイプオルガン。1736年クリストフ・ムシュレル作

――エスピナスさんをそこまで惹き付けるオルガンの魅力とは何でしょう。
エスピナス: オルガンは非常に多彩な楽器です。製作される国と時代によって楽器の構造や機能が異なりますし、楽器によって音楽や音色も変わってきます。私がオルガンに魅了され続ける理由はここにあります。こういった多彩さがオルガンの魅力です。

――2016年、エスピナスさんは新しいCDを出されましたね。その中で、フランスの偉大なオルガニストであるアンドレ・イゾワールが編曲したJ.S.バッハの作品を演奏していらっしゃいます。イゾワールはあなたの師匠でもありますよね。彼との思い出話をひとつ教えてくださいますか。
エスピナス: このCDは、私の親友であり同僚でもあるミシェル・ブヴァールと一緒に出したものです。私も彼もイゾワールの弟子でした。イゾワール先生との思い出はたくさんありますね…ひとつ選ぶのが難しいくらいです。一緒に歴史的オルガンを見に出かけたこと、一緒に東京を旅したことなど…。その中でも、最後の思い出は特に心動かされるものでした。イゾワール先生が亡くなる数ヶ月前、彼はすでに重篤な状態だったのですが、ブヴァールと一緒に出したCDを聴いてもらうために自宅を尋ねました。すると先生は微笑んでくださったのです。それが忘れられません。

2016年リリースのCD (la dolce volta)

――フランスには素晴らしいオルガンがたくさんあります。たとえば、パリのノートルダム大聖堂やサン・シュルピス教会、フィルハーモニー・ド・パリ、リヨンのモーリス・ラヴェル・オーディトリウムなどのオルガンは本当に素晴らしい楽器です。京都コンサートホールにも、日本でも最大級の素晴らしいオルガンがあります。この楽器について、どんな印象を持たれましたか?
エスピナス: うーん、この質問にお答えするのは難しいですね。なぜならこの質問に答えている時点では、まだそのオルガンを演奏したことがないからです。でも早くこの楽器を知りたいですし、絶対に素晴らしい楽器だと思います。

京都コンサートホールのパイプオルガン。ヨハネス・クライス社製

――ところで、エスピナスさんにぜひお伺いしたいお話があるんです。
フランスの「王のオルガニスト」の歴史は非常に長く、その役割も重要なものでした。1678年からは1人のオルガニストが3ヶ月間、つまり1年で計4人のオルガン奏者が「王のオルガニスト」として職務に就いていました。例えば、フランソワ・クープランも1月から3ヶ月間「王のオルガニスト」を務めたという記録が残っています。エスピナスさんは2010年に、ヴェルサイユ宮殿王室礼拝堂オルガニスト4名の中に選ばれました。当時と現在を比較すると、オルガニストを4人選定するという共通点がみられますが、オルガニストとしての役割においてどのような違いがありますか?
エスピナス: 17~18世紀の王立礼拝堂オルガニストは「演奏会」をしませんでした。彼らの役割は、典礼時に演奏することに限られていたのです。
今日、王立礼拝堂では宗教的な行事はかなり減っています。私たちの役割は特にコンサートで演奏することで、その他には非営利団体や学校、企業のセミナーのために演奏することもあります。

ヴェルサイユ宮殿王室礼拝堂のオルガン。1709-10年ロベール・クリコ&ジュリアン・トリブォ作

――9月16日の京都コンサートホールでの公演プログラムには興味深い作品が並んでいますが、どのように選曲なさいましたか?
エスピナス:前半は、師であるアンドレ・イゾワールに対するオマージュです。彼は演奏家としても(素晴らしいグリニー全曲録音を出しています)、バッハ作品の編曲者としても、作曲家としても活躍しました。後半は、20世紀フランスの偉大な2人のオルガニストであるルイ・ヴィエルヌとモーリス・デュリュフレへのオマージュです。デュリュフレの《前奏曲、アダージョと「来たれ、創造主よ」の主題によるコラール変奏曲》は、プログラム冒頭に演奏するグリニーの作品に呼応しています。

アンドレ・イゾワール(1992年、Orgue en Franceより)

――現在、幸いなことに私たちはフランスの素晴らしいオルガン・レパートリーに恵まれています。フランスのオルガン作品の魅力を教えてください。
エスピナス: フランスのオルガン・レパートリーは本当に幅広く、非常にたくさんありますよね。ルイ・クープランやティトゥルーズといった前期バロック作品からグリニーやマルシャン、フランソワ・クープランといった後期バロック作品、19世紀初頭のボエリー、フランクやヴィドール、ヴィエルヌ、デュプレのロマン派的かつ交響曲的な作品、トゥルヌミール、デュリュフレ、ジャン・アランの近代的な作品もあります。また、20世紀から21世紀にかけてもたくさんの素晴らしいオルガニストやオルガン作曲家がいます。オリヴィエ・メシアンもそうですし、ジルベール・アミ、グザヴィエ・ダラス、ジャン=ルイ・フロレンツ、ヴァレリ・オーベルタンなど……。私は彼らの多彩な作品が好きで、よく演奏します。

©Emma POMMER

――さて、最後になりましたが、エスピナスさんの演奏会を心待ちにしている京都のファンに向けて一言お願いします!
エスピナス: 1986年に初めて京都を訪れたのですが、日本の歴史が凝縮された素晴らしい街でした。
日本を訪れると、いつも大きな喜びを感じます。ですので、このたび京都コンサートホールでオルガンを演奏し、みなさまにお会い出来ることをとても幸せに思います。

2017年7月 京都コンサートホール事業企画課 メールインタビュー(た)